第7話

うちのトップの神哉藍かみやあいは、こういう事前、事後処理も抗争の一環だと考えている。



 スポーツと同じで、敵を知り、反省を次に生かすことがチームの強さにつながる。単純に友情だの仲間愛だの、目に見えないものだけでは制覇はできないのだと。



 

 一息つこうかと2階を見下ろせば、旧部室棟の裏手には、手入れのされていない雑草が人の足を隠すほどに生えており、その真ん中には太くて大きな柿の木がそびえ立っている。



 何気なく、そよ風に当たり、揺れる草を見つめていると、どこからかミシミシと嫌な音が聞こえ始めた。



 今にも下がりそうな瞼がはっと開き、何事かとその音に耳を傾ていると、



 バササササササーーーーーーッッ



 と大きな音を立てて、目の前に見えていた柿の木が、下から3分の1くらいの長さで横に折れ、倒れた。



「は?????」



 まさか、千城工業の奇襲?!!!



 とりあえず2階からその折れた柿の木をパッドのカメラに収め、部屋を出た。



 ···藍はまだ寝ているだろうか?あれはかなりの低血圧だから起こすのは止めて階段を下りる。




 今日は補講日で、ほとんどの奴等が単位のために校舎の方にいる。ここからは少し距離があるから今の柿の木が倒れた音は聞こえないだろう。



 雑草が足についてズボンが汚れるのが気に食わない。それでも千城工業の奴がいればこの手で倒さなければならい。



 そう思い、ゆっくり倒れた木に近付いていく。

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