第4話

ここは『あの柿の木の下で。』という美少女ゲームの世界。通称"あの柿"。



 美少女ゲームというのは、数いる女性キャラたちとの健全な恋愛シミュレーションを楽しむためのゲーム。主にプレイヤーさんは男性が多く、彼らは"ヲタク"や"草食系"と呼ばれる方たちだそうです。



 ゲームの世界だと気付いたのはいつだったか、そう、あれは新たなゲーム機本体が発売され、それに伴いこのゲームの移植版が発売された時だったはず。



 自分の肌がやたらきめ細やかになっているのに驚きました。それに心なしか目元もぱっちりとした雰囲気で、周りの景色の色調も鮮やかに。



 でも他の女性キャラは全く気付いていない様子で、それよりもプレイヤーを落とすことに必死だったようです。



 疑問を持ち始めた私は、こっそり皆さんの行動を盗み見るようになりました。



 女性キャラが彼に告白された後から、また同じ行動パターンを繰り広げていく。まさにループしている世界。


 

 同じクラスのヲタクさんたちが、こそこそと美少女ゲームについて語っているのを耳にしているうちに、この世界も美少女ゲームなのではと思い始めた次第です。



 それでも、すでに行動パターンを理解しているにも関わらず、どうしても彼の心を掴むことはできないまま、また今日という日を迎えてしまいました。



 最近ではもうプレイヤーの方自体が少なくなっているため、もう私はこのまま恋を実らすこともできず、ここでひっそりと最期を迎えることになるのかもしれません。

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