第5話

私は、さっき彼と空音さんがいた柿の木の下に行くと、大きな太い木の幹に自分の拳を打ち付けました。



 「うっううっ、」



 いつもは冷静で、乱れた姿など誰にも見せたことのない私ですが、もう涙も嗚咽も止まりません。



 辛い、つらいです。あんなに優しく接してくれていた彼が違う女性と結ばれていく姿を見るのは、もうこれ以上耐えられません!嫌です!この世界から抜け出したいです!!



 

 木の幹に左右の拳を打ち続けていると、地鳴りが身体に響いてくる気がしますが、きっと気のせいでしょう。



 ひとしきり涙し、少し我に返った私は、柿の木を後にしました。





「ふう、少し、すっきりしました。」



 と、丘を下ろうとした時でした。



 後ろから柿の木が倒れてきたのは。



 ミシミシッという音と共で振り返れば、柿の木の幹がすぐ目の前まで倒れてきていて



私は意識を手放しました────。

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