第14話:攻撃の要と盾スキル
黒炎のディアモは、ゲーム設定上はミカの好感度がハート3以上になると、討伐クエスト中に出現する。
それを倒すには、ミカの好感度が3以上で主人公と接触している場合のみ出現する【絆スキル】が必要という設定になっていた。
「ミカ、ちょっと腕に触れてもいい?」
「ん? いいぞ」
天界の武術訓練場。
剣術の稽古をつけてもらった後、僕は了承を得てミカの腕に触れてみた。
絆スキルが出現している、確認してみよう。
僕だけに見えるステータスウィンドウを開いて、ミカの好感度を示すハートの数と、その横に絆スキルが出ているかを調べてみた。
ミカはキョトンとしつつ、自分の腕を軽く掴む僕を眺めている。
仮死状態から蘇生されて以来、ミカは敬称も敬語も不要だと僕に告げた。
それで僕はミカとは互いに名前呼び捨て、タメ口で話している。
信頼関係はできているから、絆スキル出現しないかな?
治療の為ではあるけど、2回もキスしたんだし。
この腕、いい筋肉してるなぁ。
日々の鍛錬で引き締まった上腕二頭筋を掴みつつ、そんなことを思う。
ミカはガチムチマッチョというよりは、細マッチョな体型だ。
【天使と珈琲を】のプレイヤーの大半は御腐人だから、女性好みの筋肉キャラになってるんだろう。
仮死状態になった際の少年の姿も美形で、さすがメイン攻略対象だと思う。
ゲームの設定上は、ミカと主人公が
販促ポスターやグッズなどに四大天使と天使長が描かれている中で、ミカはセンターに陣取っている。
主人公はプレイヤーの分身なので画像紹介は無く、販促画像の主役はミカみたいになっていたよ。
その割に発売前の人気投票ではルウ1位・ファー2位に負けて3位で、CV:TERUさんは「俺の担当キャラって、主役なのに人気投票でいつも2位以下なんだよなぁ」なんてボヤいていたけどね。
……って、それはおいといて。
コッソリとウィンドウを出して確認してみたけど、ミカの好感度はハートが2つ。
僕のステータスには、ミカとの絆スキルは表示されなかった。
残念。
好感度ハート3になるまで、絆スキルはオアズケらしい。
「なんだヒロ、俺の筋肉が気になるのか? 好きなだけ触っていいぞ。ほれ」
とか言って上着を脱いで半裸で僕に抱きつこうとした
僕が心配なのか木に隠れて様子を見ているルウが、天馬にコッソリ親指を立てて見せて「よくやった」みたいな感じで褒めてるし。
気絶したミカは、サッと飛んできたファーが口付けて回復してあげている。
そんな感じで天界ではコメディ担当と化してしまったミカだけど、人界では討伐隊の要だ。
攻撃に特化した炎の大天使は、攻撃だけなら天界最強と言われている。
ディアモはミカと同等の火力を持つ魔族で、過去の戦いで何度か引き分けたという歴史が残っていた。
もしもミカが殺されるようなことがあれば、天界と魔界の戦力に大差がついてしまう。
それにしても、ディアモは何故あのタイミングで出現したんだ?
絆スキルが使えないから倒せないし。
反射+反撃で追い払えたのは、たまたま僕がそういうスキルを持っていたから出来ただけだ。
もしかしたらバグかもしれない。
制作スタッフに後で報告した方がいいかな?
デバッグ作業で誰かが発見してくれたらいいんだけど。
ディアモは、ミカが生きていると知ったら、また襲ってくる予感がするよ。
次の討伐ではミカについていこう。
絆スキルが使えないのなら、他の方法で対策するしかない。
ミカの絆スキルは、ゲーム内最強といわれる攻撃スキルだ。
それの代わりになるような攻撃スキルは無いので、ミカをサポートすることで対応しよう。
「盾スキルをもっと教えて下さい」
「おお、盾の良さが分かってもらえて嬉しいよ」
僕はウリのところへ通い詰めて、盾スキルを極めることに専念した。
天界最強火力をもつミカは、攻撃力が飛び抜けて高い代わりに防御や回避といった身を守る能力が劣る。
ディアモの黒炎球を食らったら、1発で倒されてしまう。
僕はその欠点を補うことで、絆スキルが無くてもディアモに負けない戦力を目指そう。
「ヒロ、頑張ってるね」
ルウの好感度は、戦技レベルが上がると一緒にUPする仕様だ。
盾スキルの中でもディアモ戦に役立ちそうなものを選んで上げ続けていたら、ルウのハートが1つ増えて5から6になっていたよ。
「ヒロは、誰かを護りたい気持ちが強い子だね」
ついでにウリの好感度も上がり、ミカと同じハート2つになった。
戦技を教えてくれる大天使たちの好感度は、その系統のスキルレベルの上昇に応じて上がる。
「ミカ、僕が君の盾になるから、連携の練習に付き合って」
「お?! 嬉しいこと言うねぇ。いいぞ」
僕はミカに頼んで、攻守の連携の練習を繰り返した。
上手く連携がとれるようになる頃には、ミカの好感度が少し上がっていた。
といっても、ハート3つ目はまだ遠い。
次の討伐先でディアモが襲ってきたら、2人の連携で頑張ろう。
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