第2章:天使長と四大天使たち
第11話:ミカ・フラムエル
ルウの好感度はエピソード2から5まで飛んでしまったので、AIが特別にハートを5つ赤くしてくれた。
ハート5つは、攻略対象が主人公を恋愛の相手として愛し始めている状態だ。
「成人の姿でのベッドシーンはケイに任せて、私は少年の姿でヒロに抱いてもらおう」
……どうやら、AIは「受け」をお望みのようだ。
先日僕が寝起きに吸われたのと同じところに口付けてあげたら、もうその時点で艶っぽい声を上げていたよ。
エミルのBLシーンよりも艶めかしいのは、さすが隠し攻略対象といったところか。
少年ルウは華奢で肌が綺麗で、目が大きくて睫毛が長い可愛らしい顔立ち。
受けを担当するのにちょうどいい容姿かもしれない。
「大人の姿もかっこよくて好きだけど、そっちの姿も好き」
「この姿はケイの少年時代の容姿をモデルにしているよ」
少年ルウの姿が子供の頃のケイに似ていると聞いて、もっと好きになった。
もしもタイムスリップして少年時代のケイに逢えたら、僕は間違いなく口説きにいくと思う。
ルウ攻略は、隠し攻略対象なだけあってメインの四大天使のルートよりも難易度が高い。
魔族との戦闘が多いだけじゃなく、他の攻略対象とのエピソードも絡んでくるんだ。
ルウのエンディングに進むには、ルウだけでなく四大天使たちの好感度も上げないといけない。
しかし、上げ過ぎて他のキャラの好感度がルウを追い越すと、ルウが闇落ちするという最悪の事態になってしまう。
僕は四大天使からまんべんなく武術を習いつつ、ほどほどに好感度を上げるように気を付けている。
本来なら天界へ行く前に、主人公のレベルはかなり上がっている筈。
だけど、途中のクエストを省略することになった僕は、暗殺者イベントクリア経験値でかなりレベルが上がったものの、本来の半分以下だ。
でも、じっくり時間をかけてレベルを上げている余裕は無い。
現実世界では昏睡状態のケイは、僕がルウと結ばれるエンディングを迎えなければ目覚めることができない。
今は意識を失ってから3日目だから、まだ大したことはないけど。
眠り続ける日数が増えると、内臓機能や筋力が衰えてしまうだろう。
目覚めたら身体が弱っていて、リハビリに苦労するかもしれない。
長期間筋肉を使用しないと、筋肉が萎縮して筋力が低下、自分で呼吸するのが困難になると聞いたことがある。
だから、僕は最短で攻略したい。
その気持ちをルウのAIに話したら、協力してくれることになった。
「プレイタイムの時計を遅らせてあげよう」
って、ルウがイレギュラー対応してくれたのは、ゲーム世界と現実世界の時間差を広げること。
昔のゲームでいうと、倍速モードでキャラクターが修行しているようなものだろうか?
僕は四大天使たちの修行でレベルと戦闘技術を上げて、現在に至る。
おかげで今は、討伐クエストを普通にこなせるレベルだ。
ミカ・フラムエルは根性値の高い主人公が好み。
神殿での暗殺者イベントで根性値の高いところを見せてしまった僕は、ステータスでミカの好感度を表すハートの1つ目が半分ほど赤くなっている。
1つ丸ごと赤くならなかったのは、庇った相手がミカではなくルウだったからだろう。
それでも、他のメイン攻略対象たちのハートが4分の1しか赤くなっていないことを思えば高い方だ。
僕は他の3人のところへ先に習いに行き、ミカから剣術を習うのは後回しにした。
そして、初めての魔族討伐の日。
「では出発する。お前はまだ実戦は不慣れだから、ヤバイと思ったらすぐ逃げろよ」
「はい」
ミカ・フラムエル率いる魔族討伐隊。
僕も経験を積むために同行することになった。
今の僕にちょうどいい武器は弓で、空中戦ではけっこう有利だ。
『ヒロ、【不屈の反撃】があるからって、敵に突っ込むのはやめとけよ』
コッソリ念話を送ってくるケイ。
ギクッとする僕は、死なないのをいいことに討伐のラストは敵に突っ込んで反撃スキルで殲滅する気でいた。
さすがケイ、読まれている……
っていうか、天使長がミカと話している一方で、僕に念話を送るなんてこともできるのか。
今、ルウを動かしているのはAIで、ケイは深層意識で待機中の筈だけど。
待機している状態でも会話が出来る方法を見つけたらしい。
「では、出発!」
隊長ミカの号令で、天使たちが一斉に翼を広げる。
翼の無い人間の僕は、天馬の背中に乗せてもらった。
天馬は勇者に仕える種族で、念話で意思疎通ができる。
馬術を知らない者でもさほど苦労せずに乗れるので、僕の相棒になってもらった。
弓を射るのにも、馬上は都合がいい。
今回の討伐エピソードは、正規ルートならシナリオ中盤を過ぎた後半だ。
ミカ・フラムエルが絡むエピソードで、攻略キャラがミカであればイベント発生、主人公は新たなスキルを得て、ミカの好感度がUPする。
僕はミカを攻略していないので、イベントスキルを得ることはないだろう。
このエピソードには、2つの選択肢がある。
①ミカ・フラムエルたちと行動を共にする
②下位天使たちのグループと行動を共にする
ミカ攻略なら①、それ以外なら②が無難。
①は味方が強いけど、敵も強い。
ミカの好感度が高ければイベントスキルを発動できるけど、それ以外なら苦戦するので②を選ぶことをオススメするよ。
「ではここで二手に分かれる。ヒロはどちらでも好きな方を選んでいいぞ」
「じゃあ、僕はあっちのグループに入ります」
このとき、ミカは初めて僕を名前呼びした。
僕は少し不思議に思いつつ、下位天使グループに入ることを希望した。
ケイが演じたキャラ以外に、僕の名前を呼ぶキャラがいたのか。
それとも、ルウが僕を名前呼びしているから、ミカもそれに倣ったのかな?
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