第4話

リゼッタは〈リコイラ〉と〈ジャンパー〉を使役して移動していた。

〈リコイラ〉で加速した状態で〈ジャンパー〉を使役。

そうする事で、宝塔と宝塔の間を飛び移る事が出来た。

火急の用事でない限り、あまりお勧めは出来ない移動方法だ。

宝塔に飛び移る事が出来なければ、空に向かって落ちてしまう。

果ての無い青い奈落の底に落ちてしまえば命の保証など無かった。


(マスター…ッ!マスタあっ!)


彼女は体に残る痕に嫌悪感を抱きながら走り続ける。

騎士団長の棲む宝塔へ、半日は掛かる距離を、その半分の時間で移動する。


厳重な宝塔の門番が疾風の如くやってくる彼女を見て最初は警戒した。

しかし、すぐにリゼッタである事を理解すると警戒を解き、宝塔へと通してくれる。


そして、宝塔の中を走る彼女は、一目散に騎士団長の居る部屋へと向かった。


「マスターッ!!」


そう叫び、彼女は部屋の中に入る。

クリストは椅子に座ったまま、彼女の姿を確認した。


「リゼッタか…心配したよ、トラップを踏んで転移したんだろう?」


と、クリストは心配する素振りでそう言った。

彼女の肉体を舐め回す様に見ている。

白い制服は、彼女の汗で濡れていた。

素肌にべっとりと張り付き彼女の体を浮き彫りにさせる。


思わず生唾を呑み込むクリスト。

クリストは彼女をベッドの上で喘がせてやろうと興奮していた。

しかし、次に彼女の口から出た言葉に、彼は愕然とする。


「ごめんなさい、マスター…、不肖、リゼッタは…」


息を飲む。

クリストに否定される事に恐怖を覚えながら。

それでも、自分が何をされたのかを、クリストに告げる。


「クズ狗…黒狗の人間に、犯されてしまいました…」


純潔を奪われた。

その事を報告するリゼッタ。

それを聞いたクリストは目を丸くしていた。


「…」


椅子に座り直し、薬酒であるワインを注ぎ、一杯飲んだ末に。


「はぁ?」


と。

初めてクリストは人前で自らの素を出してしまった。

その反応に対して、リゼッタはびくり、と身体を震わせてしまう。

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