第2話

神の試練終了後。

部屋の中に充満されるガスの臭いに意識が途絶える。

次に目覚めた時、リッカとリゼッタは夫々、別々の空間へと別たれた。

リッカが目覚めた先には、空が見えた。


「…うぉッ!危ねぇ!!」


体が半分、建物からはみ出ていた。

驚きと共に、その場から離れるリッカ。

心臓を高鳴らせながら、自分が生きている事に安堵を覚える。


「服…と、それと宝遺物は…あるな」


自分が所持している宝遺物がきちんとある事を確認。

更に安心感を抱くリッカは深く溜息を吐いた。


「はぁ…取り合えず、神の視姦はクリアした、って事か」


元に戻った事を一先ず、良しとするリッカ。

腕を擦るリッカは、未だに彼女の感触と甘い匂いが体に移っている事に辟易とした。


「全く…あんなクソ野郎の何が良いんだ」


行為をしている最中。

彼女は顔面を真っ赤にしながら途中まで騎士団長の名を口にしていた。

精神が病む程の信仰心は立派なものだろうが。

それでも彼女は騎士団長の裏の顔を理解しているのか。

そうリッカは思っている。


「あのクズは、思っている様な人間じゃねぇぞ」


先月。

黒狗襲撃事件があった時。

其処では、リッカも同じ場所に居た。

攻略していない宝塔を根城にする黒狗。

白聖騎士団が黒狗と宝塔の攻略の為に襲撃をした。


酷いものだった。

多くの人間はクリストの手によって殺された。

男は無論、女も子供も、命乞いをする者ですらも。

総てを虐殺し、笑う様に行進をしながら手当たり次第、黒狗を殺し続けた。


多くの黒狗を殺した末に、数少ない同胞を捕らえたのだ。

騎士団長であるクリストは、仲間である騎士達に褒美として伝えた。


『思う存分に使えば良い、最後に、きちんと後始末をする様に』


如何に敵対している相手だろうとも。

黒狗もまた人である、それを道具の様に扱われた。

女は慰み者として、男はストレス発散の為に暴力を振るわれた。

仲には仲間同士で殺し合わせ、どちらが生き残るか賭け試合をされた。

醜い惨状を、人の欲の塊を。

クリストは遠くから見て握り拳を作る事しか出来なかった。


その実態に正義は無い。

だから、リッカは復讐を誓ったのだ。

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