リワードピーチ
おめでとうとご褒美
【リワードピーチ】
マンションに帰る前に駅前のケーキ屋に寄った。
お店を出た時、
「比奈子見ぃ~っけ」
「へっ!?」
晋と遭遇して驚いたけど、私が何か言う前に晋が二カッと笑った。
「比奈子に会えるとかラッキー!!俺らって相変わらず運命だな!!」
「ば…バカじゃない!!」
「相変わらず冷てぇなー……ん?ケーキ?」
晋が私の手元を見下ろした。
「何?デザート?」
「まぁそうだけど、自分用だけじゃなくて侑へのお祝い」
「何があったんだ?」
「部活でチームが優勝したんだって」
「え!?マジか!!」
「だからケーキ」
「比奈子!!俺には!?」
「なんでよ。第一あんたは部活入ってないでしょ?」
「ケチ!!」
「何言ってんの!?」
そう言って二人でマンションに帰った。
晋も変わらず私に着いて一緒に私の部屋に帰ってきた。
「ん?タスクは?」
「部活でまだなんでしょ。ケーキは冷蔵庫にでも入れとこう」
「……」
晋のジトーッとした視線を無視してケーキを冷蔵庫に閉まった。
最近、晋は侑にもヤキモチを焼くみたいで……
晋曰く『比奈子は俺より侑に甘い!!』ということだけど。
甘くするってどうするの?
わからん!!!!
……
……一応…『これ』
部屋に戻ると先に私の部屋に入っていた晋がベッドに腰掛けて漫画を読んでいたけど、私に気付いた。
「なぁなぁ!!比奈子!!」
「な…何よ!?」
「もし俺も何か頑張ったら侑みたいに俺にも何かしてくれる?」
「は?」
「ごほうび!!俺にもくれる?」
「なにかって……何?」
「何でも!!例えば何かしらの1位になったとか」
「何かしらってだから何よ?」
「ダメか?」
「ダメってわけじゃない……けど。てか晋は甘いのダメだからケーキは無理でしょ!?」
「う……そうだけどさー」
晋はツーンと顔を背けた。
私は少しドキドキしているのを悟られないように冷静を装って、晋が腰掛けているベッドに私も座った。
そして手にしていたものを晋に差し出した。
「え……比奈子?」
「自分用……だけど、クッキーなら晋も食べれるでしょ?……一緒に食べよう?」
「比奈子!!」
「わっ!!抱きつかないでよ!!本当に、本当は自分用だったんだからね!!でも別に晋のこと甘やかしてないわけじゃないから……だからあんたも侑にヤキモチなんて……って聞いてる!?」
「聞いてる聞いてる!!比奈子!!ありがとう!」
晋は尻尾振るみたいに喜び、私の首に鼻を寄せるようにして抱きしめてきた。
ホントに犬みたい。
晋は袋を開けてクッキーを一枚取った。
「今度、比奈子の手作りクッキーも食べたいな」
「うぅ……ぜ、善処します」
「はははは、なにそれ」
晋が取ったクッキーは私の口元に持っていかれた。
「はい!!比奈子!!」
へ?食べさせてくれるの?
ってこれかなり恥ずかしいんだけど!?
い……いや、余裕だ余裕。
年上の余裕を晋にも少しは見せなくては……
晋の手からパクッと食べると、グッと影が近付いた。
私がくわえたクッキーの端を晋がサクッとかじった。
クッキーを落としそうになったのを晋がすかさず二口目をサクッと食べて私の口を塞いだ。
「……っん!?」
気付けばベッドで押し倒されて、キスをされていた。
口の中のクッキーがどこにいったんだってくらいに晋の味でいっぱいになった。
「……甘い」
そう言って晋が笑うから、顔がボンッと茹で上がった。
「な……ななな、ばば…バカ!!何してーー」
「比奈子、口に粉ついてる」
「ちょ……ちょっと待って」
「いいじゃん!!俺にごほうび!!」
「だから何の!?」
「ヒミツ」
「ちょっと!?」
玄関でドアが開く音がした。
「ただいまー」
侑の声に私達は同時にクッキーの粉が気管に入って咳き込んだ。
部屋の向こうの廊下で侑がノックをした
「ヒナ姉帰ってきてるの?」
「た…侑!!待って!!ちょっと開けるの待って」
「………………、あぁ。わかった」
察された!!
それはそれでかなりの羞恥なんですけど!?
「タスク~、優勝おめでとうー!!」
「ちょ!!バカ!!今喋ったら!!」
晋が部屋にいたってバレて疾しいことしてたみたいじゃない!!って全く無実ってわけじゃないけどさ!!確かに!!
「おぉ、サンキュ」
「タスク~、俺にも言ってぇ!!」
「……おめでとう?」
「サンキュー!!」
ドア越しで謎のやり取りが!?
君に虜の私の毎日は飽きることなく、今日も騒がしいです。
【リワードピーチ 完】
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