第2話 ミッションの先に。
「ミッション。売店で人気の期間限定『焼きそばの無い、焼きそばパン』を買うこと」
今日の朝、雫からスマートフォンで緊急招集のアラートが発令された。
雫は生徒会の席に座り、その隣にはパソコンがある席に、はるが、寄り添うように凛がいた。
優奈は、呑気に朝のお茶を注いでいた。
緊急招集で集まったんだよね!?お茶なんて入れてる場合なのか!?
他の人たちは、これが当たり前と言わんばかりに冷静だった。
「(えーっと…うん!これは僕だけが、おかしいんだ。うん!そうに違いない!…なわけあるか!)」
あまりにも普通過ぎて逆に僕がおかしい人間になってる。
それで他のみんなはというと、七は凛たちの向かいの席に座っていた。
優奈のお茶でリラックスムードに。お茶のお供には、甘い香りがするバタースコッチ。冷静な凛が美味しそうに食べてる。
これは冷静でいいのか?本当にいいのか!?
昨日見た、凛とは印象が全く違う。
さて、他の人はというと、海は相変わらず壁に寄り添って立っている。そんでもって、真面目でイケメンくんの陣は席に座っている。
これが普通だよな。普通で良いんだよな!?
もう、何が何だか分からなくなってしまったよ。
吉久は何をしてるのか見てみると…意外とまともに席についてる。
さすがに、緊急招集だからしっかりと席に座っているよね。
…よく見ると、アイマスクつけて寝てる!?
やっぱりバカだ…この生徒会は手がつけれない。
僕がなんとかしなくては。
そう思ったとき、雫は生徒会の仲間に声をかけた。
「みんな、緊急ながらも集まってありがとう。いつも通りで安心したわ」
あれ?聞き…間違い?これ、いつも通りなの!?もしかして、雫様もバ…なわけないか。
ダメだ。朝からこのペースだと一日が持たない。もう、考えるのを辞めよう。
「本日の朝に、非通知のメッセージが送られてきたわ。今回は朝に届いたわ」
会長の雫が仲間に報告をした。
今回は『朝』ということは、日によって違うということなのか。本当に不定期で謎のメッセージが送られてくることになるのか。
パソコンの席に座っている、はるかがメッセージの内容を話した。
「今回、送られてきた内容は、売店で人気の期間限定『焼きそばの無い、焼きそばパン』を買うこと。これだけしか送られてきてないね」
売店で焼きそばパンか。定番だけど、何か引っかかる…
聞き間違いでは?と思ったが、はるにもう一度言ってもらうことにした。
「あの、送られてきたものって『焼きそばパン』ですよね?」
僕は何を当たり前なことを言っているんだろう。
炭水化物に炭水化物という、禁忌の組み合わせながらも、パンのなかでは定番の食べ物で美味しい。それを聞き間違いするわけが…
「あんた、バカなの?」
そう言ってきたのは、隣にいた凛だった。
「さっき言ったこと、わからなかったの?『焼きそばの無い、焼きそばパン』よ!」
最初は腕を組んで話していたが、重要なところは僕に指を指して言ってきた。
うん、聞き間違えではなかったみたいだ!僕がバカだったようだ。
「……。それって焼きそばが入ってない、ただの切れ込みの入ったパンじゃん!焼きそば入ってないのに、なんで焼きそばパン!?しかも人気で期間限定て、どう考えてもおかしいだろ!」
僕は息をきらしながら、全力のツッコミを入れた。ツッコミなのか!?指摘しただけでは?
酸素ボンベが欲しい…
僕の隣に座っていた陣は僕に『落ち着いて』と言わんばかりの仕草をしていた。
期間限定に反応して起きた吉久はというと…
「なに!?期間限定だと!雫!この任務、僕にお願いします!」
バカだ…やっぱりバカだ。こいつは。
だけど、こんなにもやる気に満ちているなんて、一体どのような焼きそばパンだ?
「今回は珍しくやる気あるみたいだし、いいんじゃないか?」
なんの疑問もない様子の海が、今回は吉久に任せてみても良いと思ってるみたい。
「僕は楽しかったら何でも良いし、付き合うよ。吉久くん」
なんと笑顔なことですことで。
僕はこれ以上、何も言わないと決めた。
一通りのやり取りを聞いた雫は今回の任務、作戦を伝えた。
「今回の任務は吉久を軸に行動を行うものとするわ。吉久のサポートを陣が。生徒の行動予測をパソコンで情報を取ってもらうのが、はると凛がしてもらう。現場の様子を七がみてもらうわ」
さすが、生徒会長にしてリーダーの風格がある。作戦としては、申し分ない内容だ。
たとえ、吉久のバカがしでかしたとしても、そのサポートに陣がいるのだから頼もしい。で、今回は僕の出番がないというわけか。
まずは仲間の連携をみて学べということなんだな、僕は。
「私と優奈はデータ班と一緒に生徒会に残るわ。司令塔がいないと対応も難しいからね。あと、言い忘れたわ。利木くん、さっそくで申し訳ないのだけど、この作戦に参加してもらうわ。もちろん、吉久のサポートとしてね」
「僕も焼きそばパンの戦場に行くと?」
油断していた。名前が出なかったばかりに、まさか初陣がこんな任務とは思ってもなかった。
「そうよ。任務は必ず生徒会のみんなが行う決まりだからね。(あのバカは失敗すると思うし、結局のところ初陣の利木くんにしか期待してないけど…)」
雫から何かボソッと聞こえたような…
「そこのバカ!何回も言わせるな!焼きそばパンじゃなくて『焼きそばの入ってない焼きそばパン』ということを忘れるなよ。何回言わせればわかるのよ!」
いつもの、凛からの激が飛んできた。それを落ち着かせるかのように、はるは凛になだめた。
そのおかげで凛は、なんとか収まってくれた。
「そういえば海は何をするの?」
雫に聞いてみた。
「海はボディーガードよ。見た目は少し怖いから、何とかなるかなと思ってね」
あー、これ何も振り分けるものがなかったから、適当に役割を振った感じだこれ。
一つ疑問に思うことがある。
焼きそばパン、いや、焼きそばの無い焼きそばパンを買うだけなら、販売される前に並んでいれば買うことが出来るのではと思った。
雫はあったときに説明してくれたが、干渉ができるときもあれば、干渉が出来ない場面もあると言っていた。
これをもとに考えると、事前に売店に並んでいた時、先生に見つかるというリスクが起きる。そのリスクは、干渉をするであろうと考えてのことだろうか。
このことを少し雫に聞いてみた。雫はその問いに答えてくれた。
「確かに、利木くんの言った通り、干渉できるもの、できないものが存在する。まだ、詳しいことはまだ判明されていない。利木くんが言ったことを私なりに推測してみるわね」
僕が言ったことを、雫は真剣に考えて推測してくれた。
「例えば授業に参加しても、しなくても影響は出ない。参加した場合、授業に参加したことになる。結果、干渉していると推測ができる。授業を参加しなかった場合、欠席扱いとなる。その時、売店にいた場合、先生に見つかると干渉を受けてしまうことになるわ。」
なんだか難しい。結局のところ、何を基準として影響を受けるのか。そこが、難しい点かもしれない。
「見つかってしまえば、そのまま生徒指導室へ連行される。見つかってしまえばの話よ。だから、見つからないところで、現場状況を確認できれば問題は起きないということよ。この実験では、吉久を使って検証しているわ」
吉久はいつも、便利屋みたいに扱われているような。
「今回、干渉をしない場面はないということね。なので、売店の実行人は適当に授業に参加をしてもらうわ。続けてこの実験は行っていくつもりよ」
吉久よ、言えることは…これからも頑張ってくれ。
「さて、作戦内容も伝え終わったところで『焼きそばパンだけど、焼きそばパン作戦』を実行するわ。男子どもは頑張ってよね。それでは作戦開始!」
お昼までの間、男子組は授業を受けることになった。
しかも、今日に限ってテストだった。
1限目のテストは国語だった。
過去の記憶がないため学力も失われてると思ったが、問題を解き始めると何故かわかる問題と、わからない問題があった。
学力の面では、記憶は失われていないということだろう。
問題は一通り解き終えた。思っていたよりも問題は解けていた。
今日のテストは国語、数学、英語の三教科をすることになっている。三教科の中でまず国語をしているが、国語は問題ないみたいだ。
数学、英語とこの後あるが、どのようなものが出てくるのか考えてみた。出てきそうな問題を考えてみると、これらも記憶として残っていた。まず、学力については大丈夫そうだ。
そんなことを考えてながら、他の仲間たちの様子を見ることにした。
陣は手ごたえがよさそうだった。一緒にバカをしているとは言えど、普段真面目であり、生徒会の会計を担当しているということもあって、余裕がある様子だった。
海は真面目にはしてない様子。多分、現実世界ではないということもあって、適当にしているみたいだ。数問解いたあと、机に伏せて終わるまで寝ていた。
吉久はというと、サイコロを振っていた。この光景は、アニメや漫画にしか存在しないと思っていたが、実際お目にかかれるとは思ってなかった。というより、実在したんだと驚いた。
そんな吉久だが、サイコロ振って回答してる様子をみて、自信満々に回答をしていた。
サイコロの運で、どこから自信が生まれるのか僕にはわからない。
一限目の国語のテストが終わるチャイムが聞こえた。
その音を聞いて寝ていた海は目を覚ました。
吉久は何故か、ガッツポーズを見せていた。
「(その自信は、どこから来てるのだ!?)」
僕にはわからないかった。
陣は、清々しい様子でテストを終えた。
二限目は数学、三限目は英語と続いた。
国語と同じように、みんなテストを進めていた。
昼前の四限目では、今日行ったテストの回答が返ってきた。
僕は平均70点以上で、それなりには出来ていた。ということは、現実世界でも同じような成績であるわかった。
海は適当にしていたため赤点ではないものの、それに近い点数で帰ってきた。
陣は頭が良いのか、すべて点数は満点だった。現実世界でも優等生で過ごしていたと思うと、羨ましい思いがある。
吉久は、みんなが予想をしていた通り、すべて0点で答案用紙が返ってきた。学力も行動もバカだとわかった。
吉久は、この点数に納得してない様子で、先生に抗議したが結果なにも変わらなかった。
抗議しても変わらないのは、見ていて予想は出来たが。
テストを受けていた男性組は、現実世界と変わらない雰囲気で学校生活を過ごしている中、女性組はというとティータイムをしていた。
時間はテスト中に戻り、女性組の様子を見てみよう。
男性組はテストをしている中、女性たちはティータイムをしていた。
優奈はお茶の準備をしているなか、あらかじめ教室に仕掛けていた隠しカメラで、はると凛はその様子を見ていた。
雫は売店近くで身を潜めている七から、定期連絡を受けて状況確認を行っていた。
優奈がお茶を入れ終わると、生徒会で待機してるみんなにお菓子と一緒に配っていた。
それをいただきながら、パソコンで監視している、はるたちはわらいながらモニターを見ていた。
何を笑っているのかというと、吉久の行動をみて笑っている様子だった。
「あのバカ、いつもサイコロ振ってテストに挑んでいるけど、いつも結果は0点なのよね」
凛が吉久のことを話していた。
それを聞いていた、はるはいつものように、
「凛、あまり吉久くんのこと笑わないの。真剣にやっているんだから」
まるで、姉と妹のようなやり取りだった。
はるの注意にしょんぼりしていた。
そんな二人はテスト中の様子を確認した後、他の教室であったり、廊下、売店の監視をしていた。
それを見ながら、優奈からもらったお茶とお菓子を楽しみながら自分たちの仕事をしていた。
一方、雫は七の定期連絡をもらいながら、優奈と一緒にお茶を楽しんでいた。
話は少し真面目な話になっていた。
先に話し始めたのは雫だった。
「私はこの世界に来た時、誰もいなかった。私が一番だった。何もわからないまま、この生徒会を拠点として運よく居場所が作れたわ。その後、今の仲間たちがこの世界にきたわ。私の次は優奈、あなただった。付き合いも長く、良くしてもらって助かっているわ」
優奈はそれを聞いて、
「私は普通のことをしているだけだわ。辛いことは二人で乗り越えてきた。だから、これからも何があったとしても、私は変わらずにいるわ」
優しい言葉を雫にかけた。
雫は今回、突如として利木がこの世界に来たことについて優奈に話した。
「いつもなら、定期的にこの世界にやってくる人がいた。利木くんについては、この例に当てはまらない。このことについて、少し疑問におもっているのだけど、優奈はどうおもってるの?」
雫は何か、この世界が変わりつつあると思っているのか、優奈に参考程度に聞いた。
「雫ちゃんの言っているように、今回はいつもとは違っていた。だけど、今のところ変化は見られていない。そこまで心配するような事ではないと思うけど、いつもの謎のミッションが送られてきてる。メッセージに変化が起きれば、雫ちゃんが言った予想になるかもしれないわね」
優奈の答えを雫に伝えた。
優奈自身も雫と同じように、何か引っかかるところがある。だけど、それを雫に言ってしまうと不安になってしまいかねないと判断したのか、深く話すことはしなかった。
「考えていても仕方がないから、今はこのミッションを成功するように私たちでフォローしてあげましょうよ、雫ちゃん」
元気づける言葉を残し、雫が飲み切ったカップをみて、
「雫ちゃん、お代わりいる?」
と、にこやかに言った。
雫は頷き、空のカップにお茶が注がれ、もう一息することにした。
そんなことをしながら、男子組と女子組で、それぞれの時間が流れた。
モニタリングしている、はるから雫に報告が入った。
「凛と一緒にお昼時間の混雑具合を計算してモニターもみたのだけど、期間限定もあり大混雑が予想されるの。しかも、利木くんたちの教室から売店まで他の教室より遠く、入手するのが困難とだと凛と同じ意見になったよ」
それも計算の内だと言わんばかりの冷静さの雫は、事前に作戦を練っていたことを、はるたちに伝えた。
「予想はしていたわ。それでだけど、吉久のバカを利用して目的のものを入手方法を考えたわ」
雫はその作戦を、はるたちに伝えたあと、雫から利木たちにメッセージにて、作戦を実行するように指示された。
「男子たち、今回は入手が困難なことが予想される。当たり前だけど予想内だわ。それで、吉久を利用して、吉久を先に売店に行くように。その方法は、単純だわ。『お腹すいたので、先にお昼に行ってきます』と言って先に抜け出すのよ」
思ってたよりも単純な作戦だった。そんな作戦が通用するのかと疑った。
先に行かせるのには理由があった。メッセージの続きに書いていた。
「他の授業が体育で早めに終わって帰ってくることが七の現地情報でわかった。そのため、売店が混雑になることがわかったわ。だから、適当な理由で抜け出す必要ができたのよ。後は、よろしくね」
最後はあどアドリブで、どうにかしてと言わんばかりのメッセージだったが、これで行けるものなのか?
とりあえず、なんとかなれと思うしかないか。
それのメッセージを見た実行班は、みんな一人ひとり顔を合わせてアイコンタクトを取るように頷いた。
さて、実行する時間だ。
吉久がまず、雫の言った通りに作戦が開始された。
「先生、僕、お腹すいたので先にお昼ご飯行ってきます。では、また!」
「おい!吉久!またお前、先に…!」
ん?吉久、もしかしなくても、前科があるのか!?
僕が、この世界に来る前に吉久は何回もしてるのか…
先生も呆れた様子だったが、まずは先に行かせることはできた。
作戦が始まったのを見て、陣は楽しそうな顔をしている。真面目でイケメンなのに、楽しいことになると人が変わったようになる。
海はというと意外にも平常心だった。慣れた雰囲気を感じた。
それからというと、作戦通り吉久は売店に向かい到着した。
現地情報役の七から、雫に連絡が入った。
「作戦は上手くいきましたが、予定よりも人が多く吉久が、あたふたしてます」
それを聞いた雫は予想外の出来事に頭を抱えていた。
そのことを僕たちに向けて、現状報告をメッセージに伝えたころには、授業が終わり売店へと走っている最中だ。
僕たちは売店に到着したころには、想像を超える人の多さに唖然としていた。
人だかりの、ど真ん中に吉久が「ここだよ!」と言ってるかのように、手を振っていたが僕たちから見ると、吉久は溺れてるようにしか見えなかった。
「海、これどうするの?」
僕は海に聞いてみた。その光景を見てる海も
「いや…僕に聞かれても、これは無理がある…」
経験豊富そうな海でさえも、お手上げ状態だった。
その間にも次々へと期間限定のものは無くなっていく一方だった。
雫はこの状況をみて、次の作戦の案を考えていた。
オペレーターのはると、凛は何かに気づいたようだ。
「ねえ、はる、ここからならいけると思うんだけど?」
「確かに、不人気の商品が並んでいるところなら、何とかなりそう。凛ありがとう」
はる、凛ペアならの情報処理能力のおかげで希望が見えてた。すぐさまに、雫にそのことを伝えると、雫は僕たちに次の打開策を伝えた。
それを聞いた僕たちはすぐさまに実行に移した。
「海の体感で先行して、僕がその後を追うことにするよ。陣は…女子に何とか例のパンを代わりに買えるように頼んでもらえるかな?一応、保険の為に」
雫の作戦をもとに、僕が考えた作戦も入れて、第二作戦が行われた。
僕たちが作戦を実行しようと動こうとしたら、ちょうど吉久が帰ってきた。
「吉久、もしかして例のものを手に入れれたのか!?」
僕たちは吉久が成功できたことにびっくりした。
海、僕、陣、ともに一安心して、顔をあわせた。
吉久が手に持ってるものを確認すると、海は吉久に
「お前…手に持ってるものって『焼きそばパン』だよな…」
僕と陣は、それを聞いて吉久の持ってるものをみると、間違いなく普通の「焼きそばパン」だった。
「吉久…お前なにしてんだ!!ちゃんと話聞いてたよな!?期間限定の『焼きそばの入ってない焼きそばパン』だって!あんなに、やる気満ちてたのに何を聞いてたんだ!」
「吉久よ…吉久は『焼きそばパン』を買ってきたんだな。正しいと思うよ。僕は。それが普通なんだよな。でも…今はその『焼きそばパンじゃないんだよ!」
僕は当たり前のことを言っているはず…だ。
でも、今は違う。
そう、今は普通の「焼きそばパン」を買っている場合ではないんだ。
だれでも、焼きそばパンと言えば「麺が入っている」ことを想像するに違いない。
今回のミッションは「麺が入ってない」ものなんだよ。吉久よ。
その様子をモニタリングしていた凛は
「やっぱり、バカはバカでしかないわね」
こうなることを予想してたかのようだった。
雫も、頭を抱えながら
「あのバカは…」
と呆れていた。
「利木くんたち、聞こえるかしら。予想はしていたけど、作戦は失敗したわ。だけど、もう一つの作戦を実行するしかないわ。あとは頼んだわよ」
雫からの連絡が入った今、海、陣、僕。この三人で、作戦を成功させるしかない。
「海、先導してくれるかな?僕がその後を追って、僕が買うよ」
「言われなくても初めからわかってるよ」
そういいながら、僕たちは人が少ないところを進んだ。
売店コーナーは活気に溢れている。その中を縫うかのように僕たちは進んでいった。
その光景はモニタリングでも見てわかる。
雫たちは成功を願いながら、モニターを見ていた。
僕たちは、その中を進んだ先に目的の物が見えた。
そして、なんとか目的地に到着し、
「期間限定の『焼きそばの無い焼きそばパン』をください!!」
僕は、強調しながら叫んだ。
残り数個だけだったが、何とか間に合った。
どれが、そのようなものかは確認してないが、またこの人込みの中を通り元の場所に戻った。
「海のおかげでこの人込みの中を進むことが出来たよ…ありがとう…」
海と僕はへとへとになりながら、壁に腰をかけて座った。
隣を見ると吉久は目を輝かせながら、普通の焼きそばパンを美味しそうに食べていた。
その後、陣も帰ってきた。陣も目的の物を手に入れることが出来たようだ。
現地を観察していた七は、ミッションの成功を雫に伝え、七は一足早く先に生徒会室に戻った。
僕たちは自販機に寄り道しながら、例の物をもって生徒会室へと戻った。
僕たちは生徒会室に戻りそソファーに座った。例の物を置いて。
「吉久のバカ!あんた、なに間違えて買ってるのよ!」
凛の怒鳴りが部屋の隅から聞こえてきた。その声はずっと続いていた。
この世界に来て二日だけど、この日常がいつもの光景のように思えて落ち着く。
「お疲れ様、みんな。例の物も入手することが出来たし、任務達成ね。」
肩の荷が下りたかのように、雫は安心した様子だった。
少ししてから、例の物を僕は見た。
「焼きそばの入ってない焼きそばパン」のことだ。
よく見ると本当に焼きそばが入ってない。切り込みが入ってるだけどパンだった。これが焼きそばパンと言っていいのか?
そもそも、焼きそばパンは「焼きそば」が入っているから「焼きそばパン」であって、入ってなければただのパンとしか…
もう…考えるのはやめよう。疲れた。
そういえば、ミッションが達成すると個別で非通知のメッセージが送られてくると雫は言っていた。
一体、その内容はなんだろう…
「そろそろね…メッセージが送られてくるのは…」
雫がそういった時、メッセージが送られてきた。
『この世界のことが知りたいなら、これから送られてくるミッションを達成することだ』
僕のメッセージには、その一言だけしか送られてこなかった。
他のみんなは、一体どんなメッセージが送られて来たのだろうか。
「雫、僕にはこのメッセージが送られてきたが、雫はどんなものがおくられてきたんだ?」
僕に送られてきたメッセージを雫に伝えた。
「私も同じような内容だったわ。他の人のどんな内容かは知らないけど。メッセージは個人に送られるから、プライベートな内容もあるみたいだし、聞かないことにしてるわ」
確かに、個人によって内容は違うと最初、雫から教えてくれた。
あまり、他の人の事は僕も聞かないようにしようと思った。
「なあ、雫。いつもなら、よくわからない内容しか送られてきてないけど『この世界について知りたいなら、ミッションを達成することが条件だ』と送られてきた。これは、どういうことだ?」
海はいつもと違う内容に戸惑っているなか、他の人たちも声をそろえて同じメッセージが送られてきたと言っている。
みんな今回は生徒会にいる人たち全員が同じ内容だったようだ。
「雫、今回は特別なのか?個別で内容が違うと言っていたが、僕は初めてだからわからないけど」
僕は疑問に思っただけだ。
他の人は、今回例外だったみたいで、戸惑いがあった。
「利木くん、いつもは違うメッセージが個別で送られてくるのよ。前も話したけど。でも、今回はみんな同じ内容で話が変わってくる。私の予想だと、利木くんが来たことによって何かが変わろうとしてると思ってるわ。これは、偶然かもしれないけど」
雫はそう言い残した。
僕が来たことによって、この世界に何らかの影響がでてるのだろう。
それは、良いことなのか、悪いことなのか、僕には判断できない。
「今回のメッセージはみんな同じ内容だったということがわかったわ。それで、みんなに聞きたいことがあるわ」
雫は生徒会メンバーに、これからの方針をどうするか聞いてみることにした。
「今までわからないことだらけの世界が、知る機会が得れるチャンスがメッセージとしてきたわ。そこで、このまま続けるか、それともメッセージを無視してこのまま、過ごしていくのかを決めてほしい。一人でも反対がいれば、これからのメッセージは無視して過ごすことになるわ。これが条件よ」
その提案を仲間に言った。
僕が来たことによって、少なくともこの世界に影響出てることには違いないはず。
僕は過去の記憶とこの世界について知りたいため、このまま進めていきたいが、果たしてこの状況を、仲間はどう思っているのだろうか。
「考える時間をみんなに与えることにするわ。決断の時間は、今日の夕方五時までにお願いするわ。それまでは、自由時間とするわね」
雫が言った後、各メンバーはそれぞれ考える時間を与えられた。
結果がどっちに転ぼうとも、個人の自由だ。
僕はそれまでの時間を待つことにした。
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