楽しい時間は唐突に…
雪咲 彩
第1話 世界の始まり
僕は気が付けば、知らない学校の校舎に立っていた。なぜここにいるのか、僕はまったくわからない。わかるのは、僕が身に着けてる制服と名前だけだ。心当たりがないか制服を触って確かめた。すると、胸元のポケットにスマートフォンがあった。
「このスマートフォンは僕のものなのか?」
とりあえず、このスマートフォンを開いてみると通信は圏外になっている。アプリにはSNSのメッセージや、通話機能、そして個人の生徒手帳記録があった。
「名前は…音野 利木。それは僕の名前に間違いない。生徒手帳には…僕の名前と、この世界の学校名だけか…」
とりあえず、わかることは僕の名前と制服だけがわかる。それ以外は全くわからないことだらけで、頭の中の整理が出来ない。
「僕の名前がわかっただけでも良しとするしかないか…」
本当に身の覚えのない場所だ。それに、記憶もない。
考えても仕方ないので、とりあえず学校の校舎を歩いて見て周ることにした。周りをみても、知らない光景しか入ってこない。
校舎を歩いていると、目の前から知らない女子生徒が現れた。
「(僕の着てる制服とは違う…。しかも、知らない人だ)」
そんなことを考えていると、彼女が僕に向かって近寄ってきた。そして、僕に話しかけてきた。
「あなた、知らない顔ね。ようこそ、名もない世界へ」
知らない顔とは…、こちらも同じことを言い返した言葉だ。
今、僕に起きていることについて、彼女に質問をしてみることにした。
「ここは、一体どこ?目が覚めたら、知らない校舎に立っていて、僕が知っている学校も違う。ここはどこ?」
僕が今起きているこの現象について、彼女に質問を投げかけた。
少なくとも彼女は、この場所について、そして僕に起きている出来事について、知っていそうな挨拶をしてきた。きっと何か知っているに違いない。
僕の質問が食い気味にしたせいで、彼女は少し引いてしまっているに違いないと思っていると、彼女は何度も同じ質問をされているかのように、堂々としていた。
「あなたも同じ人ね。ここに来た人はみんな、あなたと同じように質問をしてくるわ。まあ、このような状況になっているのも無理ないわね。説明してあげるわ」
『ここに来た人』とは一体、どういうこと?少なくとも、僕だけではないというのは確かだ。僕以外の人が同じようなことを体験している。
でも、なぜ?そんな事を考えていると、女は詳しく説明してくれた。
「私も、あなたと同じ体験をしている一人よ。私たちは、この場所を『名もない世界』と呼んでいるわ。私も最初は、あなたと同じ反応だったわ。私も含めてみんな記憶がない。なぜ記憶がないのか、知らない学校にいたのかも、今でもわかっていないわ」
僕以外にも同じ体験をしている人が、複数人いることがわかった。この場所にいることも、今もわかっていない。
では、この世界は一体なんだ?
わかったことがあっても、わからないことだらけだ。考えても考えても、疑問が膨れ上がるだけだ。だから、これ以上は考えても意味ないと思い、今起きている現状を受け入れるしかない。今は、それでいい。
「私たちは、このわからない世界で過ごすしかないと決めたわ。いずれ、わかる時が来ると願ってね。だから、今を楽しんでいるわ。みんな、毎日が楽しい時間を共に過ごしているの」
彼女たちも、僕と同じ考えだった。わからない世界で考え続けるよりも、今を楽しめばいいと。
この世界のことを少しは知れたところで、彼女は僕に自己紹介をしてくれた。
「挨拶が遅れたわね。私は『雨空 雫』よろしくね。このような世界でも、楽しい仲間と一緒に毎日を過ごしているわ。それで…あなたの名前は何?」
挨拶が遅れてしまった。頭が真っ白な矢先に、疑問を彼女にぶつけてしまったせいで、初対面ながらも申し訳ない気持ちになった。だから、僕も彼女に挨拶をしよう。
「僕は『音野 利木』初対面で、突然の質問責めになってしまった。ごめんなさい…」
僕も相手の立場なら、突然詰め寄られたらびっくりしてしまうかも。ただ、相手も慣れていそうな様子だったため、どんなきもちなのだろうか…
彼女はそんな僕を見て、
「音野くんだね。よろしくね。私のことは『雫』でいいわ。両者堅苦しいことはやめて、ため口でいいわ。まあ、このような世界だし、私たちの仲間になって楽しく遊んで行こうよ」
彼女は僕に仲間として歓迎してくれているみたいだ。笑顔でこちらを見てきた。
このような世界に一人でいるより、仲間たちと一緒に遊んで楽しんだ方が良いに違いない。
「僕のことは好きに呼んでもらっていいよ。それより、仲間って言ったけど僕以外にも、同じような人たちがたくさんいたりするの?」
仲間と言ったからには、同じ体験をしてる人が少なくともいると考えていいだろう。その仲間と毎日楽しく過ごしてると考えると、その人たちはどれくらい、この世界にいるのだろう…
「音野くんと同じ、私も含めて仲間たちも同じ体験をしているわ。理由なんてしらない。考えたこともあったけど、結局なにもわからないままで。それでも私たちは、この世界の真実を探しながら過ごしてるわ」
不思議な世界に来たといえば良いのか、悪いのか。今のところは、僕に不利益なことはないのだから今は一度、このことは頭の片隅に置いておくくらいでいいだろう。
「さて、長話はここまでにして私たちの仲間のところに案内をしてあげるわ。音野くんにとっても、きっと長い間共にする仲間であり友達でもあるからね」
すると、彼女のポケットからスマートフォンが出てきた。
「今から仲間のところに行く前に、ここに来た時、スマートフォンを持っていたと思うけど、今は手元にあるかしら?」
この世界に来た時、なぜかスマートフォンがあったが、今の時代では学生が持っていてもおかしくないだろうし、あまり気にはしなかった。
僕は、ポケットから自分のスマートフォンを取り出し、雫にスマートフォンを見せた。
「それが君のスマートフォンね。そうしたら、音野くんの連絡先を交換しましょうよ。後で、仲間のグループも招待してあげるわ。何かと便利なものだからね」
そう言って、僕は雫の連絡先を交換した。
交換が終わると、彼女は僕に仲間のところに案内してくれることになった。
「(雫はこの世界に慣れてる感じがする…)」
定期的に僕みたいな人が、この世界にたどり着くことが居たから当然か。
彼女に案内された場所は生徒会室だった。この世界に来て数時間、何か知れたかと言われたら何もない。彼女の説明くらいだろう。だから、今はとりあえず、彼女についていくことにした。
入る前に一言、雫から、
「音野くんは、今日からこの生徒会の仲間と一緒に過ごすことになるわ」
そう言ったあと、生徒会室の扉を開けるとそこには、これから共に過ごすことになる仲間が並んでいた。
生徒会室に入ったあと、雫は歓迎するように
「ようこそ、私たちの仲間である『名もない生徒会』の人たちよ。とりあえず、今はここでゆっくりすればいいわ」
色々とありすぎたこともあり、ソファーが置かれていたため、僕は腰をかけることにした。
僕は今日からこの生徒会として過ごすことになるとは思ってもみなかった。もう、わからないことだらけだ…
ソファーに腰をかけていると、生徒会の仲間である男子生徒が雫に声をかけた。
「なあ雫、これが今日言ってた人か?最近はこんなことは起きなかったが、なぜ今になって人が増えたんだ?相変わらず、俺たちと同じ体験をしてるみたいだし」
最近?つまり今までは定期的にこの世界に、人が現れたということなのか?ますます、わからなくなってしまった。
雫は冷静でいている。そんな雫は、僕のことを自己紹介してくれた。
「海、とりあえず落ち着いて。そのことは、みんなで考えていきましょう。それよりも、今回この世界に来た『音野 利木』 私たちと同じ体験をしている一人よ。ちなみに、『かい』は『海』と書いて呼ぶのよ」
海のことを落ち着かせながらも、海と僕の自己紹介を同時にしてくれた。器用な人だ。
海はあらかじめ、僕が今日、ここの世界に来ることがわかったかの言いぶりだった。やっぱり、この世界について何か知ってるに違いない。
聞くにしても、いきなり言い出すのも変だと思い、とりあえず僕は仲間のみんなに挨拶はしておかないと、聞きたいことも聞けないと思う。
「今日、この世界に来た『音野 利木』です。僕が今日、ここに来るのをわかったかのような言い方だけど、それはなぜ?」
挨拶の後に、その疑問を投げた。
「それについては、私から説明するわ」
雫が事情を話してくれるみたいだ。この仲間のリーダー的な存在なんだろう。他の人もこの場にいているが、口を挿む人はいなかった。
「わかったと言うよりも、直感みたいなものだよ。前触れはない。ただ、いつもとは何か違う、そんな経験を誰もがしたと思う。それに近い現象が直感として感じ取ることが出来るんだよ」
直感と言われると信憑性というか、説明になってない。そんな単純なものなのかと思ってしまう。
すると、雫はポケットからスマートフォンを取り出した。
「この世界に誰かが現れたとき、スマートフォンに通知が来るようになっているの。誰がそのことを知らせてるのか、未だにわかってないわ。それを知って、あなたを探しにい行ったのよ」
スマートフォンには、そのような機能が搭載されてるのか…
「何もわからないことだらけだと思うから、生徒会にいる仲間を紹介するわね」
雫は順番に仲間の紹介を僕にしてくれた。
「まずは、一番最初に話した『山岡 海』よ。少し口調は強めだけど、仲間思いな人だわ。生徒会の役職としては無職よ」
生徒会の役職に無職って存在するのか…無職ってなんだよ。初めて聞いた役職にびっくりした…のか?
「次は生徒会副会長の『岩浅 優奈』 彼女は頼りがいあるお姉さんって感じね。怒らせたら怖いから気を付けてね」
「私、怒っても怖くないもん!でも、そんなに怖がらなくていいのよ。わからないことあったら、気軽に聞いてきてね」
メガネをくいっと上げながら、小声で言った人がいた。
「いや、あの人は怒らせると本当に怖いから気を付けるんだ。利木くんよ。あれは…鬼だ」
「吉久くん…今、何を言ったのかしら?聞き覚えない単語が聞こえてきたのだけど!」
僕に近づいてきた人は『吉久』という人物らしい。その後は…というと、吉久は優奈に連れられて、悲惨な目に合ってるのが見えなくてもわかる。
吉久の悲鳴が聞こえたような気がしたが…うん!聞かなかったことにしよう!それよりも、優奈を怒らせないようにしないとな。
またか…と日常茶飯事のように頭を抱えていた雫でしたが、
「さっきの人は『吉野 吉久』だわ…見た目は真面目に見えて、とてもバカなのよ…ちなみに、生徒会の役職は『バカ担当』になってるわ」
なんだよ!バカ担当って!初めて聞いたわ!この生徒会仲間は、まともな人はいるのか?雲行きが、どんどんと良くない方に向かっている気がする。
「次は風紀委員の『東条 七』 彼女はこの生徒会の中では一番頭がよく、いつも冷静だわ。いつもながら、このバカ騒ぎには呆れるのよ。音野くんも、気にしなくてもすぐに慣れるわ」
呆れている彼女だけど、一言だけ僕に自己紹介をしてくれた。
「あなたも、同じようにバカ騒ぎを起こさないようにしてくれると助かるんだけど…」
あれれ?おかしい…男子みんなバカをしているから、僕もバカだと思われてるのか?理不尽だ…
僕はこの仲間入りしないようにしないと。
「パソコンで処理作業をしている二人がいると思うんだけど、作業をしているのが『澤味 はる』で、いつも一緒にいるのが『水野 凛』で、はるに手を出すと凛が容赦なく襲ってくるから気を付けてね。ちなみに、本人の許可があるから言うけど『はる』は男の子だけど、心は『女の子』だからね。アウティングはしないように」
雫から最後は強めの口調で僕に言ってきた。可愛い女子生徒とおもってたけど、いろんな人がいるんだって、今この場所に来て知った。
性別に関係なく、接して楽しむことに改めて思った。
「最後は『夜空 陣』ね。彼は真面目な人なんだけど、楽しいのを大事にしてるから、バカどもと一緒にしてやらかしてしまうんだけど、根はとてもいい子だから。この中では、一番仲良くできるんじゃないか?音野くんには」
確かに、男子たちと比べると大人しい。楽しいことをするがために、一緒に遊ぶことがあるんだ…なんか不思議な人…?
一通り雫から挨拶を終えたところで、雫は僕に衝撃なことを言ってきた。
「それで音野くんには、私の生徒会長の補佐をしてもらうわ。ちょうど人が足りなくてね。他のバカには難しい話だからね」
入ってきて、まさかの会長の補佐!?僕にそれが務まるのか?
僕は雫に具体的に何をすればよいのかを聞いてみた。
「雫、補佐とは具体的に何をすればよいのだ?」
雫は難しいことは言わず一言で返した。
「何もしなくていいわ」
それって補佐とかいらなくない?何もしなくてって。何のための補佐だよ!
無職とか、バカ担当とか、変な役職になるよりは良いか。
「何もしなくてもいいって…補佐とは一体…ないよりはマシか」
雫は堂々とした様子で
「あのバカたちと同じ役職よりは良いでしょう?」
雫は雫なりに、多分考えがあるはずだと思いたいが。これから、どうなっていくんだ?この生徒会は。
雫は、その後、僕に、
「音野くんには私と一緒に、いや、この生徒会の仲間たちと一緒に楽しい時間を過ごすことをもとに『名もない世界の謎』を一緒に探してほしいわ。それは、とても重要なことだわ」
忘れていた。この世界の謎のことを。
僕は、何処からこの世界に来て、僕の過去を知りたい。それを、この短時間で忘れていた。
僕は、この仲間と一緒に謎を探すことを雫に伝えた。
「雫、僕も一緒にこの世界の謎が知りたい。一緒に」
雫は当然のように答えた。
「もちろん、嫌といっても手伝わせる予定だったからね」
拒否権はなかったみたいだ。この仲間たちとなら、何かわかる気がする。やれることはやってみよう。
そう、僕は決心した。
生徒会の仲間たちの紹介が終わると、優奈とが生徒会室に戻ってきた。
吉久の姿はというと…うん、触れないでおこう。
優奈はすっきりした様子。
挨拶が終わったところで、僕はこの世界について雫に聞いてみた。
「雫、この世界について詳しいことを教えてほしい」
僕は単刀直入に言った。
雫は、この世界のルールを教えてくれた。
「ここにいる仲間には何度も話しているけど、改めてこの世界について、今わかっていることを音野くんに話しておく必要があるわね。まず何から話したほうが良いかしら…」
雫は手を顎に乗せて、何を話そうか考えている様子。そのくらい、話したいことは多いということなんだろう。
「まず、なぜ音野くんがこの世界に来たことがわかったのかを説明したほうがいいかしら。この世界に誰かが現れたとき、スマートフォンにノイズが聞こえてくる。その後、非通知としてメッセージが届くのよ。誰なのかは今もわかってないわ」
この世界に来た時、スマートフォンを持っていた。でも、僕の端末には何も現れなかった。つまり、先にこの世界に来た人物だけが、この現象が起きたということなのか。
「正確な位置情報は表示されないんだ。でも、誰かがこの世界に訪れたという事実に変わりはないわ」
雫はかなりこのことについて詳しいみたいだ。
壁に寄りかかっている海が話した。
「俺がこの世界に来たのは雫のあとだ。雫はこの世界に一番最初に来た人物なんだ。それから、定期的にこの世界に人が訪れ始めた。そこから、この生徒会メンバーだ」
雫が一番最初に!?だから、この世界について詳しかった訳だ。雫の場合、一番最初に訪れたのなら、まだ何か知っているかもしれない。
「だから、この世界に詳しかった訳で冷静に対処していたんだ…なら、もっとこの世界について教えてくれよ!」
僕は、この世界が知りたい。もっと、たくさん!少し、声を荒らげて言ってしまった。
雫はそんな僕を見ても驚きもせず、冷静にしていた。
「音野くんもわからないことだらけで、焦ってしまうのも仕方ないわ。今は落ち着いてほしいわ。すべて話すと言ったはずよ」
僕は焦っていた。すべて話すと言ってくれた。その言葉を信じて、冷静にしようとした。
「私が来たときも、記憶はなかったわ。歩き回るとこの世界に人はいたわ。音野くんみたいに生徒や先生に話をしてみたわ。返ってきた言葉は『何を言っている?』その一点張りだわ。ゲームで例えるなら、NPCかのようにね。この世界の謎以外の、ごく普通の会話をすれば普通の人のように接し話を返してくるわ」
つまり、この世界を聞くことはできないが、私たちと同じように普通の会話もできるということなのか。
僕たちが学校生活を送っても支障はでないということか。
「居場所を作るために探していたところ、偶然にも生徒会が空いていたのよ。そこから私は生徒会として居続けているわ。食事は食堂で食べることが出来る。その、スマートフォンを使って販売機にかざせば、食券がでてきて食べることが出来る。寝床は、生徒会室を使わせてもらってるわ」
まさかスマートフォンにそのような機能が搭載されてるとは初めて知った。現代的だな、以外にもこの世界は。
「だから日常生活に支障はないわ。欲しいものは全て、スマートフォンで解決できるわ。授業については、参加をしてもしなくても私たちに、何かが起きることはないわ」
僕たちのこの世界に存在して認識もされてる。だけど、都合が良いのか悪いのかわからないが、僕たちのことを認識されないこともあるということか…
思ったことは全て都合が良すぎるという点だ。
話を聞いてみて、スマートフォンが重要な端末である可能性が高いと考えていいのか。
パソコンの操作をしていた、はるが話に入ってきた。
「この世界においてスマートフォンは重要な端末だから、私たちの考えはこの世界において大事ということだけ、覚えてもらえるといいな。あ…ごめんなさい。話の途中に入ってしまって…」
優しい口調で教えてくれた。引き気味な感じに話してくれた。その隣にいた凛が僕に一言いった。
「はるが優しく教えてくれたのだから感謝しなさいよね!ちなみに、はるには手を出さないように!その時は…わかってるわよね?」
それを見ていた陣は僕に一言いった。
「気が強い凛だけど、これでも凛なりに君のことを思って言っているから気にしないでね。挨拶が遅れてしまったけど、僕は『夜空 陣』陣でいいよ。よろしくね、利木」
男からみてもイケメンに見える。現実世界なら女子にモテモテなんだろうな。それに真面目で優しい。男子にも人気がありそうだ。僕には遠い存在に見えた。
一方あまり話さない『東条 七』はというと、大きなクッションで寝っ転がっていた。
「(あの子はマイペースで自由人だな…)」
そんなことを思いながら、仲間の人たちと話していると、雫はさっきの続きを話した。
「この世界にはルールがあると言ったわよね。干渉できるときもあれば、出来ない場面がある。スマートフォンはこの世界において重要な端末。あと一つ、非通知としてメッセージが送られてくること」
メッセージ?誰が、なんのために?もう少し詳しく聞いてみる。
「このメッセージは不定期で送られてくるわ。送られてくる内容はクエストのようなもので、過去に送られてきた例を挙げると『中間試験に参加しろ』このようなメッセージが送られてきたわ。達成すれば各自にショートメッセージが送られてくるわ。それは、人によって内容が違ってくる。達成しなかった場合は、何も送られてこないわ」
メッセージの内容が気になる。命令に参加するか、しないか。それは、僕たちにとって得になる内容なのか?
「達成して送られてきた内容は、過去の記憶に関係するものなのか、もしくは、この世界の真実のことなのか。そんな内容だったわ。わからない内容でも私たちは、とりあえずその指示に従うことにしたわ。何かわかるかもしれないと思ってね。話は以上よ。ここまでわからないことはあるかしら?」
わからないことしかないに決まっている。でも、この世界の、過去の自分を知れることがあるなら、僕はメッセージの指示に従おうと決めた。それを雫に伝えた。
「わからないことは沢山ある。この世界と過去の自分を知れることができるのなら、僕もメッセージに従ってみるよ」
雫はその回答をしてくるとわかってたかのように
「音野くんなら、そういうと思ってたわ。これからもよろしくね」
僕はこの謎を、この仲間と一緒に探すことにした。
雫は生徒会長が座る机の引き出しから何かを取り出していた。取り出したものを僕に差し出した。
「今から音野くんは私の補佐だ。そして、この生徒会の仲間の一人でもある。だから、私たちと同じ制服を音野くんにプレゼントするわ。大事に使ってよね。そこに扉があるでしょ?生徒会の物置場となってるから、そこを使ってね。大事にするのよ」
僕は雫からもらった制服を、生徒会の物置場へ移動して着替えることにした。物置場にしては予想しているよりも綺麗で、物置場とは思わないくらいだ。
僕はその場所で今着ている制服を脱ぎ、新しい制服を着ることにした。
新しい制服に着替え終わると、物置場を後にした。
雫は新しい制服を着た僕をみて、
「うん!ぴったりね!これで、私たちの仲間入りだわ。着替え終わった制服は、そこにロッカーがあるでしょ。そこを使ってちょうだい」
ロッカーへ向かうとロッカーのプレートに僕の名前が書かれていた。その隣のロッカーを見ると『吉野 吉久(バカ担当)』と書かれていた。
それって生徒会の役職ではないでしょ!と思いながらも、前に着ていた制服を僕のロッカーに入れた。
いつか、僕の過去がわかることが来るのだろうか。一人でいるよりも、仲間と一緒に探して見つけていこう。
きっと何かがわかると信じて。
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