第7話 世界の疑問と不解明の事実

 一回目は聖霊全般、二回目はシルヴィとダンジョンの話、どちらも頭を痛くさせる内容だ。


 三回目としてサラマンダーは今回が最後らしく、何か事あるごとに褒めて褒めてと体を伸ばしアピールをしている。


 やはり聖霊と言うより可愛いトカゲにしか見えない、父様も初めは頭を撫でて機嫌を取っていたが途中から面倒になったようで、扱いが雑になっている。


 今回の内容は世界が聖霊を隠している理由、一回目も二回目もずっと気になっていた隠さなければならない理由そのもの、それはとある関連してそうな気がしていた組織の話にも繋がった。


 紋章を宿した者で、更に一度紋章発動を済ませた者が聖霊に関する話を知る事と、次の世代に話す資格をえる。


 一回目の話だけなら仕組みとして定められていると思う程度だったが、二回目のシルヴィが行ったような特定のダンジョンで聖霊誓約を行う方法、話したり伝えたりする権利はないが、隠された聖霊の話を知り、紋章の代わりに身体を代償と変え力を得る。呪いのような隷属を命じられる事で人としての生涯や自由は二度と得られないのだ。


 紋章を持たずとも知る手段があるなら、そもそも隠す必要がないと思ってしまった。


 それと度々気になる聖霊本体の扱い、地下深く異なる次元領域から動けない存在、領地を守りあらゆる生命に魔力を授け土地に実りをもたらす。


 一部を切り離し紋章として特定の血筋に授け、領民が安心して暮らせる為、障壁に害を与える魔力歪みを消滅させている。


 気になる箇所は人に尽力し過ぎている事、聖霊そのものは世界の存在と等しく、何故そこまで各領地に力を与えるのか疑問が生まれる。


 そう、私は頭の中に直接響いた聖霊本体や影の声に疑問を感じている。あれはまるで無理やり押し付けられているような言葉だったからだ。


 世界の仕組みどうこう以前に隠す必要がある意味、それと聖霊の存在を知って以降気になっている封聖教会という名称だ。


 サラマンダーと父様はそこまで複雑に考える必要はないと、単純にシルヴィのような特殊方法で力が手に入るならば、命の危険性を顧みず手に入れようと行う者が多くなる。それを防ぐ目的と誓約に人を害する内容はなく、紋章を持たない者なら異常な力を使えてしまう。


 聖霊の存在を知らなければ余計な心配は発生しない為、世界が隠すことにしたようだ。


 そんな単純なものだろうか?


 いや、単純な話なのだろう…


 私は世界と呼称される誓約を作り定めた存在は何者か、世界と聞くたび気になり聞くタイミングを伺っていたのだ。


 サラマンダーは父様と目を合わせ、何かの同意を求めたようにも見える。その確認をした後に世界とは神だと告げたのだ。


 神が領地の仕組みを作り、障壁という守る力や人に魔力大地に実りを与えた話、これは広まっている常識的な話だ。


 実際は聖霊が行っていた真実、私は聖霊が神として扱われる存在と思ってしまったが、本当に神は居るようで、聖霊本体に役割を与えた神は領民が力を欲したり、人と人の争いを極力減らす為に受けている恩寵や恩恵を全て神による力だと聖霊の関与を隠したと言う事だった。


 私はつい、聖霊本体は納得して自らの意思で領地の地下深くより力を送っているのか?と聞いてしまった。


 これに関してはサラマンダーと父様は何も語らず、肯定も否定も何もないまま話が終わった。


 そして封聖教会の話を聞く事となる。


 全ての領地に存在する中央領地が作った組織、主に障壁付近に魔力歪みが発生するのかを監視、領内の歪みをある程度補足、障壁の維持をし続ける組織、適性者が見つかれば各領地の教会で管理に必要な知識を授けて力を借りる組織だ。


 定期的に教会内部にて学問や魔法勉強を開いたりと、魔法学園の入学を目指す者は必ずと言っていいほど関わりを持つ場所、それ以外にも呪いの治癒など特殊案件を行う事もある。


 全ての領地で人が生まれた後に義務付けられている魔力登録も教会で行う。


 魔力はそれぞれ違いがあり、僅かな血液を利用して名前や生まれた領地、血縁者関係等を登録する事で領地の出入りや大きな街での通行確認に利用される身分証明を行う仕組みだ。


 教会に神より授かった魔法具があり、魔力登録後に登録者本人しか使えない、魔法金属板を作り渡している。冷たい金属だが柔軟に曲がり、登録者が持つ事で内容の一致確認を自動で行う。一定期間登録者から離れると自動で消滅、他の使い道ができない特殊な道具、教会なら何処ででも再発行可能で費用も発生しない。


 これは重宝されていて、移動情報が記録され、それは教会に収集される。何処かで行方不明になったとしても立ち寄った領地や街をある程度絞り込め、不運な最後を遂げた遺品に血が付いていれば身元確認も可能となる。


 どの領地で登録しても全ての教会で情報が共有される。本人なら何処でも自身の情報を照会可能な反面、遺品などの血を使った照合は中央領地の教会のみ可能となる。罪を犯した者なら情報が記録され、身分を偽り他領地に逃げたりするのを防げる。治安維持に大きく貢献している神聖な場所だ。


 私は聖霊の話を聞くまではそう思っていた。


 知った後では意味が変わるように思えるのだ。


 封聖教会、まるで聖霊を封じているような名称、障壁も聖霊由来の力で、地下深くから動けないようにしているのは教会なのではないかと考えてしまった。


 サラマンダーも父様も封聖教会については多く話さず、領地の維持を尽力する組織と、それ以上は深く言わず、一つだけ話すと言われたのが障壁維持の秘密で、苦しそうな表情から話されたのは生贄と言う言葉だった。


 噂で流れる話の一つ、封聖教会に障壁管理の適性があると言われた者達は二度と戻ってくることはなく、それでも家族は何も疑問すら持たず、まるで初めから居なかったような扱いをする噂だ。


 実際噂の真相は不明、それは周りで選ばれた者が居ない為、真実かどうかわからないからだ。


 私はこれまで不思議と疑問を感じなかったが、聖霊の話を聞いた後から疑問が芽生えた。


 噂が流れる事は仕方がないのだが、各領地で噂の真相を確認しようとした人が消えたり、周囲に選ばれた者が誰一人として現れないのは不可解、まるで元々居なかった認識に変えられている気がしてしまうのだ。


 噂で流れる帰ってこない者、家族は気にする様子もなく、初めからいなかったように扱う噂、それが噂ではなく真実ならば誰も気が付かない理由になる。


 恐る恐る生贄とは何かと聞いてみたが、話せない程の残酷な事だと言われた。


 合法的に非合法な事を行う組織、皆に利点を与え認めてもらう事で疑われる事も不安に思われる事もなく的確に動く組織だ。


 悪でしかないはずが、神という世界が認め守る組織でもある為、何も手が出せないと言う。


 止める事ができない仕組みだった。


 三回目の終わりは淀むような空気感で終わりを迎え、身体が完全に良くなれば紋章制御に切り替える話で終わったのだ。


 サラマンダーの希望もあり頭を撫でたり、少し大きく重たい身体で近寄るのはなんと言うか威厳や神秘性が全くないトカゲだ。


 私も制御を覚えて聖霊と認め合うことが出来れば、呼び出せるようになると励む理由ができた。


 サラマンダーの本体は悪魔のような竜らしく、トカゲ姿なのは一部の力で存在している為だと、私の怯えている紋章も同じなのかを聞いてみると、使える力はにているが姿はそれぞれ別らしく、似た形はあるが全く同じはないようだ。


 一体どんな姿の聖霊なのかとワクワクした。


 一通りの話を終えて父様は部屋から出ていく、私は深いため息を吐き、自由に身体を動かせないのがこれ程辛いとは思っていなかった。


「剣振るいたい!動きたい!もう身体大丈夫なのに!なんで軟禁状態なのよ!」


 叫ばなければやっていられない状態だ。


「魔力だけは可能な限り使えって師匠言ってたし、教えてもらった事をやらないとね。」


 私に魔法の奇跡を見せてくれた師匠、本に載っている事や人から教えてもらう魔法と遥かに違う奇跡の行使、可能な限り一日の終わりまでに魔力を使い果たせ、という教えだ。


 いつ思い出しても師匠は魔法使いって感じしないし、勝手に師匠と呼んでるだけで殆ど教えてもらってないけど、今も憧れの魔法使いだから教えは守らないとね!


 短期間だったが領主邸に滞在していた師匠は私に凄い魔法を教えるより確実に魔法を扱えるようにと、魔力制御メインで教えてもらった。


 父様は師匠の事を気難しく人に教えるのは滅多にないと、辛口評価の反面信頼をかなりしているようで、魔法に関して困ったことがあれば頼ると心強い人だと言っていた。


 様々な領地に邸を持ち、基本的には魔法を広める旅と、魔法学園の内部に自身の研究室があるので物資補給時は立ち寄るそうだ。


 また会いたい、魔力制御をしっかり覚えたら魔法を教えてくれると約束したからだ!


 師匠が別れ際に話した言葉は今もしっかり覚えている。


『魔法使い?笑わせるな、この世界に魔法使いは私以外存在せぬよ、本気で目指したいのならば魔法を使う事より魔力制御をマスターする事だな、縁があれば会えるだろう。その時までに忘れず日々研鑽を重ねる事だな、、』


 父様の言うように変わった人だった。


 魔法について書かれた本は全て無価値と、教会が皆に教えている魔法座学も無価値と、魔法使いでもない奴が残した本や教鞭など覚える価値がないと言っていた。


 魔法を教えてと頼んだ時は『魔法を教えてほしいだと?ははっ!魔法とは奇跡の願いを具現化する手段に過ぎん、それよりも魔力制御を繰り返し研鑽しろ、、』と言われた。


 教えてもらった魔力制御は体内の魔力量と回復速度を高める目的で、日々繰り返しているからこそ、重要性が理解できた。


 集中して身体の内側を意識すると、魔力を認識できる。認識した魔力を自在に移動させたり一ヶ所に集めたり、初歩的な魔力制御は単純な魔力移動だった。


 私は魔力を消費する手段として特殊な石に魔力を流す方法を教えてもらい、それ以降は日々石に魔力を込めている。結果的に部屋の隅に積み重なる箱は魔力を込めた石の山だ。


 不思議な事だけど、石に魔力を移動させると綺麗に光るんだよね。


 時々色が変わったり、光方も違うから綺麗だけど、身体から魔力を石に流した後の処理を聞いていないから溜まる一方なんだよね…


 積み重なる箱の中身は全て色がついた石、箱を開けると眩しいほど光るので基本は閉じている。流した魔力を戻したり消費できたりするなら数を増やす必要はない。それができないから溜まっていく一方なのだ。


 誰かに処分して貰えばいいのだが、師匠は石に魔力を込めている事は信頼できる人以外話さない方がいいと、半分脅されるように言われた為、現在まで誰にも話していない。


 石を集めてもらう時点でかなり怪しまれ、部屋の隅に積まれた箱の中身を気にする人も多い。鍵が付いているので勝手に開けられる事は無いけど、結構邪魔だし今度処理方法を相談しても良さそうだね。


 元々の予定では魔力を込めた石の利用法を教えてもらうつもりだったが、急用で旅立つ事になり、教えてもらう事なく別れてしまった。


 それでも繰り返し繰り返し何度も言っていた魔力制御は絶対に必要だと思うので、私は教えてもらった通り行っている。


 あの特殊な状況でファイアボールを発動できた事も魔力制御の賜物だろう。


 当たり前だが魔法使いは杖や触媒を用いて魔法を発動する。杖や触媒は握っている者の魔力を一ヶ所に集めて魔法と変える。本来魔法使いに必須な持ち物で、持たずに魔法を使える人は殆ど存在しない。威力も魔法射程も魔力消費量も管理してくれる道具があれば頼るのも無理はない。そのせいで魔力制御について学ぶ機会が殆どなく、魔力制御は不要だと、制御を杖や触媒に任せて一節でも多く詠唱を覚えるべきだと言う人も多いのだ。


 あの状況で魔法が使えたのは無意識に常日頃から繰り返した魔力制御を上手く使えた結果だと、私は思っている。


 少し怠さを感じる身体で部屋の隅に向かう。


 そして鍵を使って一番上の箱を開けた。


「眩しい…未使用の石残ってて良かった!まだ少しの間なら大丈夫そうだけど、また箱いっぱいに集めてもらお!」


 ピカピカで綺麗だけど、眩しいすぎる。


 魔力を込めた石は不思議な事に時間経過しても減らないようで、輝きは失われず保ち続けている。


 今更だけど、仕組みがイマイチわからない、光が失われないなら照明代わりに使えそうな気がしてくるね…


 部屋の中は魔法具で照らされ夜も一定量の明るさがある。庭にも一定数置かれているが、魔法具を維持するには魔法触媒と呼ばれる不思議な結晶が必要で、消耗品と考えるなら高価な道具となる。領主邸も松明で照らしている箇所がある為、魔力を込めたピカピカ石の有効活用が出来そうだと考えたのだ。


 それには石を直接はめ込む器具を作ったりと大変なのですぐに考えていないが、石の処理方法として有用かもしれないからだ。


 そもそも箱の中に入れている間も光続けているのかな?


 そんな事を考えてみたが、箱を開けた時眩しさを感じる光が出ているなら常時?いや、それなら蓋を閉めている間も僅かな隙間から光が漏れ出るはずだよね?やっぱり考えても仕組みわからないや…そもそも常時発光かつ込めた魔力が減らないなら照明として魔法具の代わりに使われているはずだし…多分違う。


 分からないことを考えても仕方がないから、今は考えずに魔力を石に移動させよう!


 一度考えたことを一旦頭の隅に追いやり、体内の魔力を手で握る石に移動させ集める。


 何処にでもあるタダの石は私の魔力が込められると次第に色が付き始め、真っ赤に変わり光を放ち始める。


 色はバラバラで白赤青緑黒紫と確認できる限り六色ある。更に濃さはバラバラなのでピンク色もあれば金色のような光もある。色の指定ができない為、運試しのように毎回行い、明日の運勢を占うのが僅かな楽しみだ。


「うん!明日はいい日になりそう!真っ赤で半透明に透き通ってる。原理不明だけど、綺麗だから気にしない!でも本当に綺麗、使い道あればいいなぁ…」


 自己評価の当たり、半透明の透き通る色は中々作られないので珍しいと思っている。


 普通の石が魔力を込めれば透き通る仕組みは不明、それを考え始めると色がつく時点で理解できない為、綺麗ならば良しと考えている。


 私は箱の中に仕舞うと鍵をかける。


 コンコン!


 まるでタイミングを見計らったように扉がノックされ返事をすると、メイドが夕食の頃合いだと伝えてきたのだ。


「今行くよ!!」


 私は少し大きな声でメイドに今行くと答え、部屋から出たのだった。

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