第2話 這い上がる
りこには姉と兄がいる。
部屋の配置は階段を登り切ったところから見て右奥からりこ、兄、姉。登り切ったところの真正面にトイレと、隣にクローゼット。左の一番広い20畳の部屋が両親の部屋。
りこの部屋と兄の部屋は間取りが特殊で、仕切りが折れ戸で開放出来る作りになっている。
その日は仕切りを開けた状態で就寝していたのだが、
「……変な夢みた」
不思議な夢だった。自分の身体を真上から眺めていて、その足元――ベッドの下から三体の小さな塊が身体を這い上がろうとしていた。黒くて小さなそれらにはぽっかりとした空洞が三つずつ。――ああ、目と口か……と、りこはどこか冷静に考えた。
よく見ればその三体は赤ん坊のようだった。
水子というやつだろうかと思ったが、水子は存在しないという話もどこかで聞いたことがある。
ではこれらはなんなのだろう。
低いうなり声を上げながらゆっくりと足元を這い上がり、うねうねと動く小さな手のようなものが腰までやってきた――ところで、ぱっと目が覚めた。
自分の顔を見下ろしていたところからぐるりと反転したそれは、車酔いした時に似たひどく気持ち悪い感覚だった。見慣れた天井を見上げながら、荒く呼吸をする。
まだ明け方は涼しい時間帯のはずなのに、頭から足元まで汗が噴き出していて、シーツも枕も悲惨な状態だった。
「なんだったんだろう……」
聞けば、兄も同じような夢を見たらしい。
よくないものなのはすぐに理解した。しかし、それよりも。
「……姉さんの部屋からも変な音してた」
兄のベッドの向こう側。壁を挟んだ姉の部屋からは、ずっと壁を蹴るような音がしていたらしい。りこがこの部屋は絶対嫌だ!! ――と、言っていたところ。
姉の部屋には一体『何』が居るのだろう。
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