第2話 魔族の奴隷だった私が転生したのは魔法が存在する世界だった

魔王国

ポコは腹の痛みに倒れていた。

原因は昨日の夕飯の野草が当たったからだ。

そしてポコは腹痛で倒れている最中、最悪の光景を目にする。

それは兄として慕っていた大好きなクロスが魔族の手により殺害される瞬間であった。


「あぁ!おにーちゃん!!うわぁあああああ」

ポコは腹の苦しさも忘れてクロスの亡骸に飛び付く。


「なんだなんだ?動かなくなったと思ったら突然うるさくなりやがって。壊れてんのかこの人間は」


魔族はそう言うと無慈悲に槍を突き刺す。

ポコはクロスに抱きついたまま意識が遠のく。


「おに…ちゃ…いっしょに……」


そしてポコはあまりにも若くしてその生涯を閉じた。


そのちいさな手はクロスの身に付けるネックレスに触れていた。


………

「え!?」

ポコは目覚める。


「…ここは…どこ?」

ポコの目に映るのは暗い空に煌めく無数の光、そして一際輝く丸い物。

飼育場に居た時に聞かせてもらったことがある。あれ月だ!


「わぁ、綺麗…」

ポコはしばらく見たことのない星空を眺めていた。そこに2つの影が現れる。


「ゲゲゲ、ニンゲンノガキダ」

「ウマソウダナ」


見たことない生き物だが直感でわかる。

こいつらは魔族だ。

ポコは洗脳されており、魔族は崇拝の対象であった。しかし、目の前で大好きなクロスを殺され、自分も殺された。ポコにはもはや完全に嫌悪の対象だった。

そしてポコは思い出す。


「あれ?私なんで生きてるんだ?」


魔族もその言葉にキョトンとする。


「コイツ、オカシイノカ?」

「コイツ、オカシイナ」


…しばらくの沈黙の後、魔族達が動く。


「マァイイカ、クオウ」

「ソウダナ」


2体の魔族はポコに襲いかかる。次の瞬間!


「ライトニング!」


後ろからその叫び声がすると、目の前の2体の魔族を青い電撃が貫いた。


「アガガガガガ」 

「ギギギギギギ」


2体の魔族はその場に倒れ、溶けて消滅した。

残ったのは魔族が持っていたであろう硬貨だけだ。

「ダメじゃないか、子供が夜に街の外なんか居たら」

ポコに話しかけながら硬貨を取りに行くのはピンクの髪、手には杖、紫の衣装に身を包んだ女性。


「私、死んだはずなのに、何故か突然ここに居て…」

(死んだはず?突然ここに居た?家出の言い訳…?それとも、まさか)


女性は考え込む

「……あんた名前は?」

「わたし、ポコ!ねぇ!おねぇさんがさっき使ったのって、もしかして魔法!?」

「そうだよ、魔法だよ。あたしはマチルダ。こわ〜い魔法使いさ!」


マチルダは脅かしたつもりだが、ポコの目はむしろ輝いていた。


「すごい…すっごーい!魔法!本当にあったんだ!!おにーちゃんにも教えてあげなきゃ!」

「ポコ、お兄さんがいるのか?」

「うん、でもおにーちゃん、魔族に殺されちゃった…おにーちゃんもどこかに来てないかな?クロスっていうの」

(この子が嘘をつくようには見えない…転生は実在したのか?)

いずれにせよこのまま夜の街道に1人でいたら、ポコは魔族に喰われると考え、マチルダはポコを連れて行くことにした。


「ポコ、あたしの弟子にならないか?魔法使えるようになるかもよ?」

「ぇえ!?本当!!なりたい!マチルダさんの弟子!!」

「じゃあ、付いてきな」


ポコはマチルダの後を付いていく。

しばらく歩くと小さな村が見えてくる。


「もうすぐあたしの家がある村だ」


村の目前で1人の男性があるいてくる。

ポコは直感で感じ取る。


「マチルダさん…」

「どうかした?」

「あの人…多分、魔族…」


マチルダはすぐに杖を構えて臨戦態勢にはいる。すると男がこちらを向いて言う。


「何故わかった。すれ違い様に殺してやろうと思っていたのに」

「ライトニング!」


マチルダは容赦のない先生攻撃、青い電撃が男を貫く。しかし


「ふぅん、まぁまぁやるね」


マチルダの魔法はあまり効いていない。


「マ、マチルダさん」

「大丈夫、少し本気だすわ」


マチルダが左手に持つ杖に右手をかざし、詠唱する。足元には円形の魔法陣が浮かび上がる。


「ち、上級魔導士か」


魔族の男は咄嗟に逃げ出す。

逃げる男に向かってマチルダが杖の先から魔法を放つ!


「メガフラッシュボルト!!」


真っ直ぐに、そして音を置き去りにする速さで1㎞近く伸びた雷は魔族の男を一撃で黒焦げにした。雷が通った一直線上の物は全て黒く焦げていた。

マチルダは魔族の男が落とした硬貨を拾う。


「おぉ、銀貨が6枚!ついてるわw」


そしてポコに言う。


「ポコ、なんであいつが魔族だってわかったの?」

「なんでかな…ずっとアイツらの奴隷だったからかな…」

「魔族の奴隷!?あなたの居たところってどんなところだったの?」

「人間はみんな魔族に働かされてた。働けなくなったら殺すの。私やクロスも殺された」

(なんて酷いところなの…。やはりこの子は転生者で間違いなさそうだ)

そして2人は村に着いた。


【ユグフォルティス王国・カボチャ村】


「ようこそ、私の暮らすカボチャ村へ」


カボチャ村は家が十数軒ほどの小さな村だった。

ポコはまっすぐマチルダの家に案内される。


「かーさんただいまー」 

「おかえりなさいマチルダ。その子は?」

「迷子だったから保護したの」

「迷子!?君、名前は?」

「あ、私は、ポコです…」

「わたしはマチルダの母、チャチルよ。よろしくね」

「おーいポコ!まずはシャワーだ、こっちきな」


ポコはマチルダに連れられて初めてのシャワーを浴びる。


「あたしが綺麗にしてあげるからね」


マチルダはポコの頭や体を手で優しく洗った。マチルダの顔は整っており、髪は長く綺麗で、胸も大きい。

ポコは何をドキドキしてるのよ!っと心の中で自分に喝を入れた。

綺麗になったポコにマチルダは小さい頃に来ていたローブを渡す。

ポコはボロ布以外の服を初めて身につける。

いい匂いのする方に向かうとチャチルが料理を振る舞ってくれた。

ポコはあまりの美味しさに涙を流して食べる。

「ど、どうしたのさポコ」

「ゔ…ゔぅ…こんなにおいじいもの…はじめでたべだ…」

ポコがあまりにも美味しそうに平らげたのでチャチルは嬉しかった。

マチルダの部屋に行き、マチルダの眠るベットの横に布団を敷いてもらって眠った。初めての布団は気持ちよく、ポコはすぐに眠りに落ちた。


次の日

朝早く目覚めるとマチルダは先に起きていた。

そしてマチルダが一冊の本をポコに見せる。


「ポコがここにきた理由、これだと思う」


そこにはこう書いてあった


………


極めてごく稀に命を落とした者や、普通に生活をしているものがふいに自分のいる世界とは違う異世界に飛ばられることを異世界転生という。事実は未確認であり発動条件は不明。


………


「マチルダさん!これって!?」

「うん、ポコは異世界からの転生者で間違いないと思う」


ポコもクロスの様に、異世界に転生していた。それもクロスのいる異世界に

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魔族の奴隷だった俺が転生したのは魔法が存在する世界だった teikao @teikao7857

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