第2話 はじまりのはじまり
一九九二年の夏。航平は、田舎の工業用港がある小さな町に暮らす高校二年生だった。今では考えられないが、仲の良い仲間と線路の上を歩いて下校したり、海岸でタバコをいたずらに吸ってみたり。
もともと地味だった高校時代の航平だったが、ちょっとした男子生徒同士のいざこざの末、学校で大暴れをして大怪我をして血まみれになる大事件を起こした。それ以来、彼はヤンキーからも避けられるような孤独な学校生活だった。
そんな航平と仲良くなったのが隣のクラスで地味な学校生活を過ごしていた、吉田 昌幸だった。昌幸は優しく穏やかな生徒だった。少々荒ぶることのある航平とは陰と陽のように対照的な存在に見えた。
浩平と昌幸は、その後の人生で長い付き合いになるわけなのだが、当時もうひとり彼らの仲間、高山 慎太がいた。慎太はスポーツも万能で人に好かれるタイプだった。三人は仲が良く、週末になると航平の家に泊まりで集まって夜通しゲームをしたりして過ごしたものだった。
「なあ慎太、幽霊って信じるか?」マリオカートをしながら航平が言った。
「ん?どうしたんだ急に」慎太はテレビ画面を見たまま返事をした。
「いや別に・・・。」航平は少し言葉を濁した。幽遊白書を読んでいた昌幸もおもむろに顔を上げた。
「だいたい航平がそうやって濁すときは何かあるんだよな」慎太はいきなりスパーファミコンのリセットボタンを押してゲームを終わらせた。
「あ!なにしてんだよ」航平はもう少しで勝利するところだっただけに不機嫌に声を上げた。
「まあいいってことよ。それよりその幽霊がどうしたんだよ」
「ああ・・・」航平はためらいがちに話し始めた。
それは三日前の学校帰りのこと・・・。
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