2話 ArteFactWars(アーティファクト・ウォーズ)
緊張感が漂うグラウンドで、俺は周囲を見回していた。参加者たちはそれぞれの思いを抱え、ざわつきが続いている。ふと隣に目をやると、ふんわりとした背中あたりまで伸ばした茶髪の女の子が立っていた。この子が俺とペアを組むことになる子か。彼女は少し緊張した様子で、周囲の人々とは違う雰囲気を纏っている。
「私は
「俺は
「まだ自信がなくて……」と新田さんが続けた。「上手くできるか心配なんです」
その言葉を聞いて、俺は少し勇気を出して言った。「実は……俺、このゲーム初めてなんだ。入部試験があること知らなくてだから、その、ごめん……」
新田さんは目を大きく見開き、「えっ、初めてなんですか?」と驚いた様子で返す。その顔から一瞬、絶望的な表情が垣間見えた。「じゃあ……どうしよう……」
「うん、すごく心配だよね」と俺も不安になりながら応じた。「一緒に頑張ろうとは思ってるけど、頼りになれないかもしれない……」
「本当に大丈夫かな……」新田さんは少し不安そうに顔を曇らせた。「私が何とかするしかないか……」
その言葉に、俺の心の中で申し訳なさがさらに積もった。しかし新田さんは少しだけ笑顔を見せて、「大丈夫です、頑張りましょう!」と返してくれた。
この子に迷惑はかけられない……やれる限りのことを尽くさないと。
「それでは、ペアの皆さん、今からゲージフィールドを展開します。そして20分間の作戦会議とポジション取りの時間を設けます。」小野寺先生の声がグラウンドに響き渡った。「この時間を利用して、どのように戦うかを相談し、戦略を立ててください。」
周囲から一斉にざわめきが広がる。緊張感が一瞬和らぎ、皆が作戦会議の準備を始める。
最新設備が整った校舎内、俺は新田さんに連れられるようにして、俺たちは水無月学園の校舎3階にたどり着いた。明るい蛍光灯の光が教室内を照らし、ガラス張りの窓からは学園全体が見渡せる。
「ここなら見当たり良好♪ それじゃ今から和泉君にAFWの基本的なことを教えるね。」
「よろしくお願いします!」
「このゲームはフィールド内にソリッド粒子を散布させて拡張現実空間を作るの。流石にソリッド粒子のことはわかるよね?」
「一般知識程度ならわかるよ。」
【ソリッド粒子】 約20年前に発見され、コンピューターや人間から発せられる電子信号に反応する特殊な粒子。特に、人間の脳波や感情に基づく無意識の電子信号に敏感であり、その信号をキャッチして物理的な形状を具現化する。漫画やアニメで流行った必殺技とかもこの粒子のおかげで真似事できるようになったんだよね。
「良かった……」
「次にどうやって相手を倒すかだけど
「自分のHPってどう確認すればいいんだ?」
「えっとね…右目を2回ウインクすると右上の方にカーソルゲージが出てくるからそこで確認できるよ」
実際に試すと右上の方にHPゲージとSCゲージが出てきた。
「ホントだ出てきた」
次に俺はもうひとつの疑問点を新田さんに聞いた。
「アーティファクトってどうやって具現化させるんだ?」
「えっとね……心を無にして、その無の中にある自分だけの強い意志を拾い上げる感じでやれば出来るよ。」
「わかった……やってみる。」
……
「出来ないんだけど……」
「ごめん、本当にやると思わなかった。実際にアーティファクトを出す時は
「私がやってみるね……
彼女は腕を前に出すと手の所が淡く光だし、アーティファクトが召喚された。
「私の
「痛ぁ!?くない……?」
「あはは!ごめんね、でも実際に実演した方がわかるかなって。このようにアーティファクトの攻撃が当たっても、体に纏ってるソリッド粒子が衝撃を感知して人体を保護するから安全だし、その受けた衝撃の強さでHPのダメージ量を計算するんだよ。」
「それじゃぁ……次は和泉君がアーティファクト召喚してみよう。」
「わかった。
俺は新田さんと同じように腕を前に突き出しアーティファクトを召喚させると、俺の手の中に1つの武器が出てきた。
「剣……?」
「おぉ……バスターソードかな?頼りになる武器だね。これなら和泉君が前に出て囮になりつつ、私が後ろから弓で打ち続けて相手を倒す素晴らしい作戦が出来るね」
「囮……?」
「うん♪ 死なないよ……私が君を死なせないから」
「私の
「
「あぁ……ごめんね、そこの説明もしてなかったね。プレイヤーはね
「どうやって特殊能力を使えるの?」
「SCゲージってのが
「どうやって溜めるの?」
「こう……そう、気を貯めるイメージでやれば良いんだよ。このチャージ量の差で与えられるバフの効果だったり、HPの回復力が変わるんだよ。」
「つまり……永遠に俺は君に回復させられる囮ゾンビになればいいんだね。」
「うん♪」
「あ、ちなみにこのSCゲージは通常攻撃の時にチャージ攻撃みたいな感じで使うとダメージ量が上がるから、覚えていてね。」
「わかった、覚えておくよ。」
「次、私が確認したいんだけど和泉君の
「……どう確認するんだ?」
新田さんは少し楽しそうに笑みを浮かべた。「右目を2回ウインクして、アビリティの確認したいと念じればわかるよー」
「わかった。」俺は彼女の指示に従い、右目を2回ウインクした。「【
「
「モンスター?」
「ほら、一応このゲーム元を辿ると
「なるほど」俺も少し興味を持つ。彼女の言葉から、ゲームの世界観がより鮮明に浮かんできた。
その時、アナウンスが鳴り響く。【間もなく
「詳細気になるなあってそろそろ始まるね。切り札になりそうだし、大事な時まで使わないでおこうよ。」天音の声には、少し緊張感が混じっていた。彼女も、これから始まる戦いに対する不安を抱えているのだろう。
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