第2話 特異課
「あれ?俺...。」「私何してたんだっけ...。」「「「うわっ!?」」」
ビルの前に集まっていた人達は記憶を消された影響で刹那呆然としたが、目の前にあるビルを見て驚愕し、写真を撮ったり警察に電話をし始めた。
その様子を観察した真は望来の前に戻り、「寒いでしょう、これを羽織ってください。」と自身の上着を望来に渡した。
暫くすると警察が現れ、廃ビルの入り口や駐車場を閉鎖し始めた。「スタッ」真達の近くで着地音がした。しかし、着地した地点を見るも誰も見えない。
「あ、生嶋(きじま)さん居た。降りますよー。」と声が聞こえ、黒いスーツの小柄な青年がパッと現れた。
そして犯人と望来を抱えた真はスーツの男と手を繋いで全員が透明化して落下し、青年と真が下になる事で無事に全員無事に着地した。
「透、俺はバイクでこの場から離れる。」と言い、気絶した犯人と望来を救急車から出てきた消防士に渡した。
「絢華先輩が能力使ったから周りに人は居ないかなっと....。」自身が乗ってきた車に戻りノートパソコンを開く、
「Heaven(ヘヴン)?」「はーーーい!!なにか用ーー???」と可愛らしい声と萌え萌えな青髪ツインテールで警官コスの美少女のアバターがPCから出る。
「周りに一般人はいない?」「うーーーんと、ちょっと待ってねーーー!!!」衛星写真が透の居る地点までアップされ、解像度が徐々に増していく。
「付近13.7m以内に警官と消防士以外は居ないよーーー!!!」と伝えると、「そうか...なら衛星から記憶消去のレーザーは撃たなくていいな...」と安堵した表情を見せた。「あれとんでもなく費用が高いんだよ....。」と小声でぼやいた。
望来は意識があったため救急車内の椅子に座ると、「望来ちゃん、大丈夫〜?」と同乗していた別の私服姿の女性が話しかけた。ゆっくりした口調で、なんだか人を落ち着かせる。
「えぇ..身体の方は何とも無いです...。」と目を見て答える望来、「私がそばにいるから安心してね〜。」その声を聞いていると不思議とリラックスしてきた望来はいつもの調子を取り戻して質問した。
「あの〜私気絶してたんですけど、見られたりしてません?SNSでの発信とか怖いんですけど。」と自分の身よりネット上で顔を晒されることに対しての不安を持っている事を明かした。
「それは心配ないわ〜。さっき助けてくれた真ちゃんが周囲の記憶消しちゃったし〜、通行人は自主的に帰って貰ったから〜。」と女性はデコられた銃を見せながら言った。
「そ、そうなんですね。(絶対自主的じゃない!)」「私はただみなさんに帰りたくなーーーる光線をお見舞いしただけだから警戒しないでねーー?」と圧をかけつつ望来に説明した。
そして2人を乗せた救急車は近くの病院に向けて発進した。
病院にはショックが大きく未だ気絶中の犯人が預けられ、望来は透の運転する車に乗せられ、自宅の豪邸に送り届けられた。
廃ビル近くの物陰に停めてあったバイクに戻り、少し迂回して大通りに出た真はふいにある事を思い出した。
(そういえば...先ほど廃ビルの近くに居た少女は望来さんが連れ去られる前まで一緒に居た友人だったが...異能銃、カースの能力や攻撃に用いる際に出るカースウェーブの反応が微量ながらあったな...。まさか高校にも仲間が居るのか...?)
などという事を考えながらバイクを走らせていた。5分ほどで立体駐車場に着いた真はバイク専用のエレベーターにバイクを乗せ、
ドアが閉じたらエレベーターのB2のボタンに自身も使っている特異課が所持できる銃、サイストリガーの銃口を当て、デリートモードで一発発射した。
するとエレベーターは地下深くまで進み始めた。「チーーン」ドアが開くと、そこは特命異能銃犯罪対策課本部(鴨並市部)であった。
バイクを本部前の駐車場に停め、その後自身の部屋に戻り捜査報告書を制作しようとデスクに座り背伸びをした。
「うーーむ。」、と困っている様子の中年男性の声を聞きその方向を見る。
その男性は特異課の課長であり、白髪で大きい画面が4つ、小さい画面が30もある大規模なコンピューターで、インターネット上の異能銃犯罪に関する情報、衛星カメラを通しての使用現場、売買現場の監視を、「Heaven」にサポートして貰いながら行っていた。
「うーーむ。どうしたものか....。」
「課長、どうしました。」近寄って質問する。
「あぁ、真くんか。実は人手が足りてないと上層部に伝えたところ、中国から名乗りがあったのだが....年齢が若く経験も浅いようでな...。どうも裏からの力で推薦されたようなのだが、受けていいのだろうか....。」
「中国に限らず、裏社会の息のかかった者が特異課に加入し、設備を窃盗するというのは稀にありますからね。」「志願者を出した支部の課長とは仲が良いから危険度は低いがね...。」
「これまでも引き入れた者達は大丈夫出したし、如何せん人手が足りません。特に、望来さんの護衛はいつまで続くかわかりませんから。」と引き入れに肯定的な意見を真は示した。
その後真は隊員に支給されている自身の個室へと戻った。キッチンはなく、バストイレ別で、家電は冷蔵庫くらい。各々の好きな事を出来るように広めのスペースがある作業場と小さい寝室の2部屋に別れている。
小さめのジムのようになっている自室で日課としている筋トレをし、その後シャワーを浴びて、調べ物したり、調査報告書を書いたりし、0時に寝床に着いた。
翌日5時、起床し着替え、朝食を済ませた特異課のメンバーは会議室に集まった。
以下、議会議事録と特異課概要、また絢華のメモ帳より一部抜粋
・特命異能銃対策課とは
・帖願寺 豪将 じょうがんじ かつまさ
特命異能銃犯罪対策課課長
特別異能銃犯罪対策課用特殊改良型異能銃「Cord:Tatami(タタミ)」所持
「頼れるおじさま!私たちをまとめて指示をしてくれる偉いお方!」
・生嶋 真 きじま しん
異能銃事件捜査係
特別異能銃犯罪対策課用特殊改良型異能銃「Cord:Recovery(リカバリー)」所持
「背が高くマッチョで、影のあるイケメン!基本無愛想だけど意外と優しい!」
・暮石 透 くれいし とおる
異能銃関連サイバー係
特別異能銃犯罪対策課用特殊改良型異能銃「Cord:Clear(クリア)」所持
「若い!けどハッカー歴は長いらしい。生意気だが優秀なので憎めない。基本いつもパソコン触ってる子。」
・蜜木 絢華 みつき あやか
カウンセラー
特別異能銃犯罪対策課用特殊改良型異能銃「Cord: Pheromone(フェロモン)」所持
「素敵な殿方との出会い待ってます♡」
生嶋「昨晩の事件については、以前予告のあった菅原グループ会長「菅原 祐一」様の御令嬢「望来」様を狙った事件として間違いないでしょう。」
蜜木「いろいろ質問したんだけど〜、どうやら「テラー」っていう人物の指示に従うのに嫌気がさして、身代金を単独でせしめるのが目的だったみたい。」
暮石「ならまた別の犯行グループが襲ってくる可能性は高いっすね。昨日の犯人みたいに雑魚だったらいいんすけど。」
生嶋「一つ気になったのは、犯人の使用した銃は特殊能力が銃単体で出来る射撃と被っており、異能銃の中でもかなり弱い部類に入る。犯人は異能銃についてあまり知見がないのかもしれません。」
帖願寺「そうだな、何者かがカースに詳しくない破楽戸(ごろつき)に接触し販売もしくは譲渡し、自身の犯罪に加担させている可能性が高い。の引き続き生嶋には望来さんの護衛を頼む。蜜木は犯人の目が覚め次第、尋問の為に病院に向かえ。暮石は私と衛星から調査しつつ、ウェブ上で情報を検索してくれ。」
生嶋「それと、望来様の友人の方と接触したのですが、ごく微力ながらカースウェーブが検知されました。後ほど遭遇次第、身体検査をしますが、高校にも協力者が居る可能性があります。」
帖願寺「いずれにせよ。完全に脅威が去るまではこのヤマを離れられない。その際に別のヤマに対処できるよう、出払っている者に可能であれば協力してもらうよう連絡しておこう。」
暮石「えー爛さん来るんすかー。」
蜜木「ブラウンさんは潜入調査してますし厳しいでしょうからね〜。」
帖願寺「では、解散!」
少し時間は経ち午前8時、「やばい遅刻する...!昨日遅く帰ったのに課題難しかったせいで寝るの遅かったし....!」と未希が駅を降りて猛ダッシュしていた。
いつもより1つ遅い便に乗ったため、遅刻するかの瀬戸際の状態であるため無我夢中で走っている。「背に腹は変えられないか....!」と未希がゴミの散らばっている路地を通ろうとすると、昨夜ぶつかった男、真が上から降ってきた。
「えっ?まだ夢?」と困惑しながら後ろに戻って逃げようとする未希に真はショックモードで撃ち気絶させた。倒れそうになった未希を支えた真は素早くかつ念入りにボディチェックを行ったが、異能銃は発見されなかった。
壁に立てかけられた未希は目を覚ますと、「あれ?寝てた...?」と寝ぼけてながらも高校に向かった。そして学校に入った瞬間にチャイムがなり、遅刻してしまった。
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