第11話 コミュ障と使えない力
夜恵は頬杖をつきながら呆けた顔でギルドを眺めていた。
最近近くの街道でどのような魔物が出たとか、性質の悪い商人が冒険者をだましているとか、どこどこにある薬草がよく効くだとか、最近出来た食事処の女の子が可愛いだとか、そんな空気が言葉に解けるように、極々当たり前の身近さにある。そんな会話をただ聞いていた。
そんな中、エルミーとバッツの声に負けず劣らずな声で罵倒し合っている男女の話が夜恵の耳に入ってきた。
「まったくあんたはいつもいつも、あたしの脚を引っ張っているって自覚してよ!」
「はぁっ、そりゃあこっちのセリフだ! お前の魔法一切当たってねぇじゃねえか」
「それはあんたが敵を引き付けておかないからでしょう、集中して狙いも定められないのよ。速く動くだけでそのカスみたいな攻撃のせいで一切振り向いてもらっていないじゃない」
「誰がカスだ! 1回の戦闘で100回以上切りつける、高速剣のバイスと呼ばれた俺に喧嘩売ってんのか!」
「100回以上切りつけても倒せないの間違いでしょう。ゴキブリバイスの方が名が通っているわよ」
「よ~し表出ろ! 今日こそ泣かせてやる!」
「上等だオラ、その顔面にあたしの魔法叩き込んでやるわよ!」
「ノーコンリリカが顔面に狙いが定まるわけねえだろ!」
「ぶっ殺してやる!」
そんな2人を夜恵は呆けた顔で見ていた。
何と程度の低い喧嘩をしているのだろうか。2人とも喧嘩をする前に腕を磨けばいいのに。と、冷めた目を向けた後、退屈に欠伸を漏らす。
しかしそんな夜恵とは対照的に、周りの冒険者たちは2人を呷煽り、挙句の果てにはどちらが勝つかの賭けを始めた。
だがその賭けの内容が、本命、魔法がどこかの建物に当たり消火活動で決着。次点、速さをコントロールできずに頭を打ち付け合い2人で気絶、大穴、どっちかが勝つ。
それは最早勝敗のつかない賭けなのではないだろうか。
夜恵は興味なさそうに2人から視線を外すと、やっと言い合いが終わったのか、エルミーとバッツが同じ席にやってきた。
「ああ、あの2人が気になります?」
「いいえ」
「男の人の方はバイス=アルフカリド、今言っていた通りとにかく速く動ける人なんですけれど、彼が剣を振るうと紙すら切れなくなるんですよ」
また勝手にしゃべる。
夜恵は興味ないと言っているのに、エルミーはいつも聞いてもいないことを話しだす。
興味もなく、大した話でもなさそうだからと頬杖をついたまま聞く夜恵の頬はムニと潰れており、その瞼はいつもより下がっている。
そんな夜恵に気が付いたのか、エルミーが喋りながらその夜恵の頬を両手でつかんだ。
「なんでも『
「でもその反面『
冒険者止めちまえ。
夜恵が虚空に頷き返しており、アルフという者を憐れむような目で見つめた。
「でも斥候としては優秀で、場を掻きまわしてくれるから団体での戦闘では役に立っているみたいなんですよね」
「リリカも似たようなものだよね」
「リリカ=ムオレーナ『
「あったんないんだよね~」
「ギルド内では彼女も呪い持ちかと囁かれているのだけれど、そういうわけでもないみたいで、どういうわけだか敵に当てようとすればするほど遠くに逸れていってしまうんです」
「でもリリカも団体戦ではその魔法も牽制として意味を持っていて、撃っておけば誰も近寄らなくはなるんだよ」
このギルド、冒険者に向いていなくても誰これ構わず招き入れるのは良くないことではないだろうか。
そんな話の中、夜恵が首を傾げた。
「ヤエさんどうかしましたか?」
「えっと、魔法と、ギフト……」
「え? ああ、よく知らないんでしたっけ?」
「うん? 親、もしくは通っていた学校とかで習わなかった――ぐぇ!」
「ヤエさんは良いんですよ。う~ん、それじゃあ少しお勉強会をしましょうか」
「うぃ、よろしくお願いします」
そう言ってエルミーが準備をすると、奥に引っ込んでいった。
「うう、叩かなくてもいいのにさぁ。ああヤエちゃんごめんね、色々事情があるよね」
「うぃ? ううん、変な格好のお姉さんに攫われてきたからよく知らないだけ」
「まさかの誘拐! え、大丈夫なの? 拉致監禁? 拉致監禁なの? 酷い人もいたものだね」
夜恵の言葉不足でバッツまさかの邪見を働く。
そうしていると、エレミーが飲み物と菓子を手にテーブルに戻ってきて、これから魔法とギフトについての講義を始めるとどこかから持ってきた眼鏡をクイと上げるのだった。
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