第5話 コミュ障、力の応用を覚える
その後、同じようなやり方で数十の獣を葬った夜恵はその屍を頑張って編んだ植物の縄で縛り、街まで引っ張ろうとしてる。
「ん~~~」
しかしそこまでやって夜恵は思い出すのだ。冒険者ギルドへの報告はその魔物の体の一部を提出することであり、このペタウルフと呼ばれる狼のような獣は舌や耳、毛皮なんかを提出すれば確実なのである。
「……」
虚空を睨む夜恵だったが、もうすぐに陽が落ちてしまう。急いで魔物の処理をする。
しかしどう処理した物か、夜恵はただの一般宅配員だ。獣の毛皮を裂く方法も知らなければ、刃物も持っておらず、例え持っていたとしても捌けるのは鶏くらい。
どうした物かと頭を捻らせる。
「う~んぅ?」
だが心配することはあらず。夜恵には変質者から貰った――否、アノニユグドの力がある。
「……ああ、あれか」
夜恵はその場で数回、ぴょんぴょんと飛び跳ねると、ペタウルフの屍に足をかけた。
「うぃ――『
アン、ドゥ、アン、ドゥ――と、続けて屍を踏みつける夜恵。
すると踏んだ先から屍の形が変わっていく。
屍がいた場所には毛皮と牙、各部位の肉と禍々しい色に変色している、およそ毒にやられた部位の肉。
夜恵はそれを手に取ろうとするのだが、ふと毒の肉を見て考え込む。
「
毒肉から毒を取り出すのだが、その毒、どうにも花の時と比べて強化された毒になっているらしく、毒Lv3という表記になっており、夜恵は毒肉から次々と毒を分解していく。
肉はなくなってしまったが、あんな毒肉食べられるはずもなく、それなら毒として活用した方が使い道も多いだろうという判断だった。
そして残った毛皮と牙、そして骨なのだが、それでもまだ持ち帰るには量が多く、さらに手で持って行くには臭いがキツイ。
「あっそうだ」
夜恵は何か思いついたのか、幾つかの花を特性還元で香りを取り出し、植物を足元に置き、先ほどのように踏みつける。
「『
一踏みでその物体の状態、特性、どのように分解できるのかを把握し、二踏みで先ほど把握したように分解、三踏みで分解した物を加工する。
夜恵は植物を分解してツタに変え、そして花の香りの特性を持った大きな袋になるように加工した。
夜恵は鼻を鳴らし、得意げに胸を張り毛皮などを袋に放り込んでいく。
これでやっとギルドに報告が出来ると夜恵は大きく伸びをして、グリウィッシュの街へと脚を進めるのだった。
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