第6話 コミュ障、人の目からの逃避

 ギルドに戻ってきた夜恵だが、どうにも挙動がおかしい。控えめに顔を伏せ、辺りをチラチラと見渡している。

 そんな夜恵に気が付き、声をかけようとする者もいたが、それを察してか、夜恵はそそくさとその者から離れ、再度辺りを見渡す。



「う~……」



「ヤエさん?」



 ため息をついてギルドから出ようと回れ右をした夜恵に、やっと声がかかる。

 さっきも対応してくれた受付のお姉さんだ。



「――あの、これを」



「う~ん? これは……ペタウルフですか?」



 夜恵は頷く。

 しかしここ一連の夜恵の不審な行動なのだが、夜恵にとって、会話をしてくれた・・・・・・・・人がこのお姉さんだけで、それ以外は会話もしたことのない人であるため、彼女を探していた。

 別に彼女に一目ぼれしたとか、喋ったから友だち。とかではなく、知らない人と会話するというストレスを極力少なくしたいがための逃避行動である。



 お姉さんの言葉に夜恵は頷き返し、ジッとお姉さんを見上げている。



「え~っと、討伐依頼の報告と言うことでよろしいですか?」



「はい」



「ちょっと待っていてくださいね」



 お姉さんが奥に引っ込んでいき、胸をなでおろす夜恵。

 これで今日は宿に戻れる。と、一息ついたところなのだが、結局服は買っておらず、これなら討伐も明日に回した方が良かったのでは。と、思い至る。



「……言ってよ」



 ぼそと呟いた夜恵はまた虚空を睨んでおり、頬を膨らませていた。

 しかしそんなことに気を取られて、近づいてきた影に反応が遅れてしまう。



「――っ」



 夜恵はびくりと肩を跳ねさせ、勢いよく振り返り、近づいてきた大男を涙目で見上げた。



「えっ! あ、いや、なんで泣いて――」



「あ、う……」



 想定していないこと、突然なこと、何の準備もなく間合いへと入り込まれたために溢れたビックリ涙である。

 体は大きいが人の良さそうな大男が終始あたふたと困惑しており、男の体が動くたびに夜恵の瞳には涙があふれ出す。



「え? あの、なんで、その」



「コラぁバッツさん、なにヤエさんイジメているんですか!」



「イジメてないけど!」



  そして大きな声で騒ぎが大きくなり、あちこちの冒険者たちがなんだなんだと一斉に夜恵たちに目を向けてくる。

 そんな中心で夜恵は完全に目を回しており、すでに臨界点を突破した頭でそのままそっと駆け出し、人の目を掻い潜ってギルドから飛び出していくのだった。

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