第55話
そろそろいい時間になり、まりあを起こすため再び部屋へ戻る聖也。
知らない内に眠ってしまったため少し驚いた様子のまりあ…長い髪を整えながら彼の話に耳を傾けていた。
泣いていたため目は若干腫れているものの、どうやら元気になったうでいつものまりあに戻っている。
そして約束通り翔人は自分が迎えに行くからと言い、彼女を先に家まで送る事に。
玄関の扉を開けると買い物をした時の荷物が散乱しており、事の大変さが痛い程伝わってきた。
「手伝おうか?」
急いで荷物を拾うまりあに声をかけるも、大丈夫だからと微笑みながら首を横に振った。
こっちは私がやるからお迎えお願いします…とでも言いたそうな表情だ。
それを見た聖也も行ってくるからと言い彼女の頭を撫でアパートを出た。
保育園に着くなり、今日は母親が来る日だと知らされていたため翔人はとても驚いた様子でいたが、どこか嬉しそうにも見える。
そして道中もいつも通り2人仲良く手を繋いで帰って行った。
「おじさん、ママは?」
「ママはお家だ」
「どうしておじさんが来たの?」
「ママはなぁ…頑張りすぎて疲れたから休んでる」
「ふーん。よくわかんないけど元気なの?」
「あぁ」
「ならよかった!」
母親が大丈夫だと知り安心したのだろう…翔人はいつものようにはしゃぎ、今日の保育園での出来事を語り出した。
楽しそうに話す翔人を横目にアパートの目の前まで来たその時、まりあが話していたあの男が近くにいる事に気付いた。
どうやら男も何か言いたそうな顔をしている…
「あの人おじさんの友達?」
「ん?まぁ…そうだなぁ…翔人、先に中に入っててくれ」
「いいよ!おじさんも早く来てねっ?」
後からまた遊んでねと言いながら翔人は駆け足で部屋に戻って行った。
その様子を聖也だけでなく男も切なそうな顔で見ている…
「おじさんの友達は早く帰ったほうがいいんじゃないか?」
「お前…」
「まりあを泣かせるな。そしてここにも二度と来るな」
「父親は俺だっ…あんたじゃないっ!まりあが駄目ならせめてあの子に会わせてくれっ!」
「図々しいにも程がある」
「知ってるんだぞっ!?あんたヤクザだろっ?そんな奴に父親が務まるはずがない!いつか絶対2人を傷付けるっ!!」
「お前もう既に傷付けてる」
「……!?」
「いいか?これが最後だ。二度とここには来るな、そして俺の前にも現れるな。出来ないならあんたの職場でもどこでも行ってやるよ」
聖也の迫力と恐怖から男は何も言えなくなり、諦めたようでゆっくりと背を向け帰って行った。
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