第51話
そしてバレンタインデーの前日…まりあの今日の勤務は午前中までのため、仕事が終わると早速明日に向けての買い物をしようとスーパーにいた。
翔人からチョコレートケーキとクッキーが食べたいとリクエストがあったためその材料と、あと聖也にはこっそりティラミスを渡そうと計画していたのでその材料を買いに来ていた。
まりあは毎年バレンタインの日は休みをとり、一日中お菓子作りに没頭している。
今年のバレンタインはいつもと違い聖也という大切な人がいるため、彼女にとってすごく楽しみだった。
そしてその帰り道…少し買いすぎてしまったと反省し、買い物袋いっぱいの食材を持って家へと向かう。
やっとアパートにたどり着いたと思ったその時…
「まりあっ!」
聞き覚えのある声に呼び止められ恐る恐る振り返ると、そこにはあの男の姿があった。
どうやらまた家の近くで待ち伏せしていたようだ。
「今日はもう仕事終わりなの?」
しつこく色々声をかけられるも、まりあは下を向き男を完全無視。
早く部屋へ戻ろうと足を進めても一歩先に男が自身の前に回り込むため中々戻れない。
「なぁ頼むよまりあ…一度ちゃんと話し合おうっ」
今更何を話し合う事があるのか…あの時自分を捨て翔人も見捨てたくせに…と、彼女は思った。
例えやりなおせたとしてもどうせまた捨てられるにちがいない。
「あの子の実の父親は俺だぞ?俺といたほうが幸せになれるに決まってる。あの時は気が動転してたんだ…今になってやっと君達2人の大切さに気付いたんだ。だからもう一度やりなおそう」
今度こそ幸せにしてみせると言われたものの、やはりまりあの意思は変わらない。
最初はすごく優しい人だと思っていた…そしてその優しさに騙された自分は馬鹿だ。
今度は絶対に騙されない…
「なぁまりあっ、お前だって父親の存在が必要な事ぐらいわかるだろ?!」
『帰ってください。お話する事は何もありません』
それだけを見せ足早に部屋に戻るも、閉まる前に扉を掴まれ中に侵入されてしまった。
追い返そうにもやはり男の力には到底適わない。
助けを呼ぼうにも彼女にはどうする事も出来なかった…
「好きなんだよまりあっ!俺はまだお前が好きなんだっ!!」
この世で一番嫌いな…触れられたくない男に触れられてしまった。
とっさに男の頬を叩き勢いよくアパートを飛び出すまりあ。
向かった先はもちろん…
「まりあ?」
インターホンで目を覚ましモニターを確認すると、そこには涙を流す愛しい人が映し出されていた。
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