第50話
それは聖也にとってとても辛い事だ。
いくらお互い想いあっているからと言っても、実の父親という存在は自身にとってかなり不利になる。
せっかく掴みかけた幸せを手放したくはない……
「結婚しよう」
思いもよらぬ聖也の言葉にまりあは驚き目を見開いた。
突然すぎるプロポーズの言葉…聖也自身も想いを伝えた時と同様、今しかない…今言わなければ。
そう思い口を開いたのだ。
「俺と結婚してまりあと翔人の3人で…ずっと一緒にいよう」
そうしたいのは彼の本音であり、そしてもう1つ…誰にもまりあを奪われたくなかった。
早すぎるプロポーズ…しかし彼は初めからそれも視野に入れて彼女達と過ごしてきた。
『本気で言ってるんですか?』
「あぁ」
『私があの人とやりなおしたいって言ったら?』
「そんな事にはならない」
『どうしてですか?』
「俺の事が好きなんだろ?」
勢いよく聖也に飛びつく彼女を受け止め、今度はめいいっぱい抱きしめた。
「俺じゃダメか?」
彼の言葉にまりあは首を横に振った。
そして…
『聖也さんじゃないと嫌です』
再び2人は強く抱きしめあった。
もう何があっても離さないし離れたくない…言葉はなくとも互いに今そう感じている。
『大好きです、聖也さんの事』
「俺もまりあが好きだ」
今度またあいつが近付いて来たら自分が何とかするからと彼女を安心させた。
そしてこの事は翔人にはまだ黙っていようと…いくらやりなおそうとはいえ、以前あんなに酷い事を言ってまりあを捨てた男だ。
一度女を捨てた男の言葉なんて信じられない。
それにまだ幼い翔人がこんな事を知ったらショックで傷付いてしまうだろう。
「家にいるのが怖かったら俺のマンションに来てくれればいい」
『ありがとうございます』
「なんならそこで一緒に暮らすか?ここだと狭いし大変だろ?」
恥ずかしそうに照れている彼女…そして携帯に
『いつかそうなればいいですね』
「その内なるさ」
『👨👩👦💓』
彼女の反応にたまらず、おいでと手を伸ばし優しいキスを送った。
まりあも嬉しそうにそれに答える。
「幸せにするからな?」
わかったと言わんばかりに彼女は聖也に身を寄せ、左手を彼の手に絡めた。
「あっ!ママとおじさんラブラブだーっ!!」
突然起きてきた翔人に驚いたまりあは、顔を真っ赤にしとっさに聖也から離れた。
普段子供の前でこんな事はしないためかなり恥ずかしかったようだ。
しかし聖也は翔人にお構いなくまりあの腰に手をまわし再び抱き寄せた。
「そうだろ?」
「僕もまぜてっ!」
勢いよく2人の元に駆け寄る翔人…今日もまたこの家から幸せそうな3人の声が聞こえていた。
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