マリアと過去
第49話
翌朝午前8時過ぎ…今日はまりあも翔人も祝日のため休みのようだ。
翔人はまだぐっすり眠っているようだが、まりあの姿が見当たらない。
変わりに彼女にかけてやった毛布が自分にかけられている。
「考え直してくれよっ!」
突然玄関から知らない男の大きな声が聞こえたため、聖也は腰を上げそちらに向かった。
来客のようだがそれにしても朝が早すぎるし何を怒鳴っているのか…
「どうした?まりあ」
どうやら彼女はこの男が訪ねてきた時のインターホンの音で目が覚めたらしい。
目の前にいる男はまだ若く、テーパードパンツに黒のニットというラフでカジュアルな装いをしている。
自分とは大違いだと聖也は一瞬思ったもののそんな事は今はどうでもいい。
これまで見た事のないようなまりあの悲しく、そして辛そうな表情…彼女に何かあったのはまず間違いないだろう。
「誰だよお前?俺は彼女と大事な話をしてるんだ。邪魔しないでくれ」
「大事な話のわりには随分嫌がられているみたいだなぁ?怖かったろ?急に怒鳴られて…」
怯えた彼女に視線を向けるとそのまま肩を抱き寄せ、まりあもまた聖也に身を寄せた。
その体は小さく震えている…
「だ、そうだ。あんたももう帰れ。なんなら俺が代わりに話でも聞いてやろうか?」
「……また来るからなっ、まりあ」
男は勢いよく玄関の扉を閉め足早にその場を去って行った。
一体何者なのだろうか?友達…という訳ではなさそうだ。
自分の知らない所で何かトラブルに巻き込まれているのではないかと思うと気が気ではなかった。
そして彼女に限って他に男がいるなんて事は絶対にありえない。
「今の男は?」
そう問いかけるも彼女は黙ったまま…そして先程よりも強く聖也にしがみついた。
「落ち着いてからでもいい。俺に話してくれ」
そんな彼女を優しく抱きしめ、大丈夫だからと何度も頭を撫でた。
しばらくするとまりあも落ち着きを取り戻したようで、彼の腕の中をゆっくりと離れて携帯を手にした。
『驚かせてしまってごめんなさい。実はあの人前に話した男の人で、つまり翔人の実の父親なんです』
何とも言えない感情が一気に聖也を襲った。
実の父親の存在…話には聞いていたが実際に会う事になるとは予想外だ。
それに会いたくもなかった…
「…やりなおそうって?」
『実は数日前に偶然私を見かけたらしくて、翔人の事も気になるし家までつけて来たとか。そうしたら家にあの子と一緒に聖也さんがいるところも見てしまったようで……あんな男なんかより自分とまたやりなおそうって言われました』
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