第48話

事を終え眠ってしまったまりあ…聖也は彼女をソファーに寝かせ、その寝顔を見つめた。

時刻は深夜2時にさしかかろうとしている。

例の女との関係もようやく切れやっとまりあだけを見つめられると思うと、聖也は幸せだった。

実はまりあと会うようになってすぐ、彼は女に別れを告げたのだが中々受け入れてもらえなかったのだ。

そもそも彼は付き合っているつもりは一切なく、自分もそのような事は一言も口にはしていない。

それなのに自分は彼女だと強く言い張り、話し合いにすらならなかった。

その後もしつこく連絡が来ていたのだが彼は全て無視している。

その連絡が落ち着いてきたのも最近の事だ。

まだ出会ってそんなに経ってはいないが、聖也はまりあとの結婚も視野に入れて考えている。

出会ったばかりでどうしてそんな事を思うのか自分でもわからない。

しかし彼は真剣だ。

どうやらこの2人はただ相性が良いのではなく、お互いに運命の存在なのかもしれない。




「信じるか?運命ってやつを」




まりあの頭を優しく撫でながらそう呟く聖也。

自分はこれまでそのような類のものは信じてはいなかった。

むしろ信じるだけ馬鹿な事だと思っていた。

それがどうだ?今自分はその運命の相手を目の前にしている。




「俺は信じる事にした」




まりあはどうなんだ?と更に優しく頭を撫でた。

彼女と出会っていなければその運命というやつにも巡り会う事はなかっただろう。

彼にとってはそれぐらい神秘的な体験なのだ。

そして眠っている彼女を背中に、彼もまた深い眠りについた。

聖也もそうだが、恐らくまりあも今夜はいい夢が見られるに違いない。

誰にも話した事はないが、実は以前彼女はこんな夢を見ていた。

それは、自身と聖也が教会で結婚式を挙げているという夢だ。

念願だったウエディングドレスを着て聖也との幸せを誓うあの場面に、現実さながらかなりドキドキしていた。

実は彼女も心のどこかで聖也と結婚する事が出来ればどんなに幸せな事か…そう思っていたのだ。

こんな自分でもようやく幸せになれるチャンスが巡って来たのかもしれない…いや、もう既に巡って来た。

まりあの場合、そもそも聖也との出会いがそうだったのかもしれない。

彼と過ごす事により彼女の運命も大きく変わりつつある。

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