第45話

そして帰り道…今夜は珍しく人通りも多く、その中をスモックを着た男の子と少し派手な格好をした男が仲良く歩いている。

その光景は何とも不思議なものだが、聖也と翔人は周囲の目など気にせずおしゃべりを楽しみながら家へと向かった。




「聞いて?おじさん」


「何だ?」


「同じ組に○○君っていう人がいるんだけどね、○○君はひとみちゃんっていう人が好きなんだって。でもひとみちゃんは違う組の○○君が好きなんだって」


「保育園の恋愛事情も大変だなぁ」


「ひとみちゃんから聞いたんだけどね、明日その○○君にお手紙渡すんだって」


「やるなぁひとみちゃん。翔人は手紙とかもらわないのか?」


「お手紙じゃないけどチョコはもらった事あるよ?」


「お前もやるなぁ」


「おじさんは最高で何個チョコもらった事ある?」


「俺か?そうだなぁ…もらいすぎて忘れた」


「そんなにもらえるのっ?!いいなー」


「そうか?もらいすぎても大変なだけだ」


「だっていっぱいもらったら毎日チョコ食べられるんだよ?」


「あぁ…そっちか。今年はもらえそうか?」


「うんっ、3人僕にくれるって」


「3人もくれるのか?よかったなぁ」


「おじさんは?またいっぱいもらえるの?」


「いいや。まりあがくれたらいいなぁって思ってるだけだ」


「ママに頼んであげようか?ママの作るチョコレートケーキ美味しいんだよ?」


「嬉しいけどそれはルール違反だ。俺は自分で努力してもらう」


「じゃあ僕も努力するっ。何したらいいの?」


「そうだなぁ…とりあえず女の子には優しくするんだ。後は泣かせない事…いいな?」


「わかった!」




2人の少しバカげた会話と楽しそうな声は街中に響いた。

バレンタインデーはもうすぐそこまで迫っている。

やはり男は年齢関係なく誰しもソワソワするようだ。




「いっぱいもらえるかな?」


「それは女の子次第だなぁ」


「楽しみっ。おじさんも楽しみ?」


「あぁ」


「早く14日にならないかな?」


「お前はチョコが食べたいだけだろ?」


「うんっ!」




やっぱり子供は呑気でいいなと思う聖也なのだった。

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