第43話

それ以来翔人と聖也の距離は更に縮まり、翔人も彼に何でも話すようになった。

そして聖也もまりあの代わりに1人で保育園の迎えに行くようにもなり、今まさに2人で歩いて帰る途中。

今日の夜はまりあが友人と食事に行く約束をしていたようでいつもなら翔人も連れて行くのだが、せっかくだからと聖也が翔人の面倒を見る事にしたのだ。

こういう時ぐらい1人でゆっくり楽しんでほしいという彼なりの気使いでもある。




「おじさんどこ行くの?お家あっちだよ?」


「家に帰ってもご飯はないだろ?」


「そうだけど…」


「今日は外で食べよう。食べたい物はあるか?」


「えっ?!お店で食べるのっ?!」




子供にとって外食は相当貴重で贅沢なもの…なので翔人もかなり喜んでいた。

そしてどうやら回転寿司に行きたいらしく、子供が絶対喜ぶであろう○○寿司に行く事に。

回転寿司なんて聖也にとっていつぶりなのだろうか…




「おじさん、これ食べてもいいっ?」


「あぁ。遠慮せずに好きな物食べろ」




寿司が流れてくるレーンを楽しそうに見つめ、自分が狙っている物を今か今かと待つ翔人。

その姿は聖也にとって内心おもしろすぎた。

子供は何でも新鮮に感じてリアクションが大きいなぁ、と。




「見ておじさん、中トロだって」


「そうだなぁ」


「…やっぱりマグロやめてあっちにする」


「バカ戻すなっ。そっちは俺が食べてやるからお前は中トロを食べろ」




日に日に子供の元気さと何をするかわからない恐ろしさを実感していく聖也。

たまに母親が子供を叱っているところを見かけたりするが、まりあはどれだけ大変か……翔人も翔人で毎日言う事を聞いてくれるという保証はない。

それでも1人で翔人を育ててきた事に、聖也は彼女に人としての尊敬も覚えた。




「タマゴだっ!ねぇおじさん、後からデザート食べてもいい?」


「寿司が全部食べられてからな?」




その時、お待たせしましたとタイミング良く店員が何かを運んできた。

聖也は頼んだ覚えがないので何が来たのかと見ていると、並べられたのはパフェとケーキとジュース…




「デザートは後から食べるんじゃなかったのか?」




何も言わず悪い顔をして寿司を食べ始める翔人。

そしてテーブルに並べられたたくさんの寿司とデザート。

これは胃袋を空けておいたほうが良さそうだと聖也は感じた…

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