第35話
しばらくすると料理がテーブルに並べられ、まりあはニコニコしながら大好きなハンバーグを口にした。
22才と言えどもやはりまだ子供っぽさが出てしまう年頃。
今まで一緒にいた女と比べると色気も大人っぽさも断然少ない…だが彼女は一番美人で一番心が綺麗で優しい。
それに時より見せるあどけなさもまりあの魅力の一つだ。
「美味いか?」
口をモグモグさせながらうんと答える彼女の姿に、自然と聖也も笑顔になった。
実はここ最近、仲間内から聖也は変わったと噂されているのだ。
前はもっと冷たく怖がられていたのだが、最近では少し丸くなったというか…少しだけ優しくなった…と、言われている。
彼らに理由はわからないし聖也も意識などしている訳ではない。
これも恐らくまりあの影響だろう。
聖也も本当はとても優しい人間なのだ。
彼女といると素の自分に戻れるため居心地が良いのかもしれない。
「ところでいつにするんだ?水族館は」
『今週の日曜日を考えてるんですけどどうですか?』
土曜日は翔人がお昼まで保育園のため、一日中楽しめる日曜日のほうがあの子も喜ぶのではないかというなんとも母親らしい考えだ。
「大丈夫だ。喜ぶだろうなぁ、翔人。まりあも楽しみか?」
『すごく楽しみです。それに翔人を中々そういう所に連れて行ってあげられなくて…本当にありがとうございます』
「良い母親だな、まりあは」
『そんな事ないです。こう見えて毎日いっぱいっぱいなんですから』
「……なぁ、俺にも何か手伝わせてくれ」
その言葉の意味がわからずまりあは不思議そうに彼の事を見つめた。
『それはどういう…?』
「そうだなぁ…例えばスーパーに買い物に行ったり、翔人の送り迎えだって出来る」
『そんな事お願い出来る訳ないですよ!それこそ聖也さんに迷惑かけてしまうじゃないですか!!』
すると聖也は腕を組み黙り込んでしまった。
表情からすると怒っているようではなさそうだが、どこか寂しそうな…虚しいような…なんとも言えない顔をしている。
『どうかしましたか?』
携帯を目の前に向けると彼は突然まりあの手を掴んだ。
彼女も反射的に聖也を見つめる…彼の表情は真剣なものに変わっていた。
「俺じゃ頼りないか?」
その言葉にキョトンとする彼女を見て、場所を変えようとお店を出てデパートも後にした。
しばらく歩き続け海の見える広場までやって来た2人。
ここは聖也のお気に入りの場所であり、考え事をしている時や1人になりたい時なんかはよく訪れている。
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