マリアと聖也

第32話

待ち合わせに指定された場所に到着するも、そこにはまだ聖也の姿はなかった。

時計を見ると、まだ約束の時間の15分前だったので気ままに待つ事に。

その間に今日買おうと予定している化粧品をもう一度チェック…のつもりだったが、たまたま新作の発売日も今日のようでまりあの心は揺らいだ。

彼女が悩んでいるのはリップのカラーで、ナチュラルなピンクベージュ系の色を買うつもりだったのだが、新作の赤リップ…しかもただの赤ではなく暗めの大人っぽい色がまた可愛い。

そのどちらにするかここへ来て悩んでしまったのだ。

しかもサイトを見ていくうちに他のリップまでも可愛く見えてきてしまった…とうとうどれを買えばいいのか分からなくなり彼女はその画面を閉じ、実物を見てから考えようと諦めた。

そしてバッグからイヤフォンを取り出し、音楽を聴きながら聖也を待つ事に…最近のお気に入りの曲はGraceのYou Don’t Own Meで、1人の時はよくこれを聴いている。

まりあの見た目的に今流行りの曲や恋愛ソングを聴いているイメージがあるが、意外と音楽の流行りには興味がなく、何年か前の曲だとしても気に入ったのがあればそれを聴いているし、どちらかといえば洋楽を聴いている事のほうが多い。




「何の曲だ?」




急に左耳のイヤフォンを取られた事に驚き横を見ると、いつの間にか聖也の姿が…そして彼はそのイヤフォンを自身の耳に…




「こういうのが好きなのか?」




そうだと頷き音楽を止めようとすると、彼にその手を止められ




「俺も聴きたい」




そう言われてしまいそのまま音楽を流す事に。

You don’t own me…恐らくまりあは理解していないだろうが、英語の読み書きが出来る聖也にはその意味が理解出来た。

You don’t own me……私はあなたのものじゃない。

一瞬自分に言われているみたいでゾッとし、思わずまりあを見たがやはり彼女はこの意味を理解していない様子。

この曲の雰囲気が気に入って聴いているのだろう…そう思う事にしたし、そうであってほしい。

この事は自分の胸にそっとしまい、イヤフォンを彼女に返し話題を変える事に…




「その靴…」




聖也はまりあの足元に目が止まった。

いつもはローファーなどヒールのない靴を履いているイメージがあったためかなり意外だった。




『一応お気に入りの靴なんですけど、普段は翔人がいるから履く時があまりなくて……変ですか?』




変どころか彼の目にはすごく魅力的に映った。

いつもはお洒落なお母さんという格好をしているのでかなりギャップがある。

やはりまりあは美人で綺麗だ……

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