第25話
「ママー、明日はお散歩行く日だから水筒とタオルがいるんだって」
先生に帰ったらお家の人に伝えるように言われたのを思い出したようで、ふと段ボールをあさる手を止めた翔人。
もちろんその事は事前にお便りで知らされているため、まりあもちゃんと頭に入っている。
『ちゃんとじゅんびするからだいじょうぶよ?』
「…言い忘れたんだけどね?あの水筒…壊れちゃったんだ」
『そうなの?』
「この前の遠足の時に落としたんだ…」
洗った時には特におかしい所はなかったが、お茶を飲む時に変な出方になるらしく、まりあも試しに水を入れてみると確かに水筒の調子は悪かった。
時刻は午後7時30分になろうとしている…よく行く雑貨屋さんが閉まるのは午後8時…
『ママすいとうかってくるからおるすばんできる?』
「うんっ!誰か来ても出ちゃいけないんだよね?」
『かぎもちゃんとかけるのよ?』
「わかった!」
『ごめんね、すぐもどってくるから。ごはんもそのあとたべようね』
行ってらっしゃいと手を振る我が子に、まりあも笑顔で手を振り家を出た。
丁度帰宅ラッシュの時間帯なので街はスーツ姿の会社員が多い。
そんな彼らをかき分け彼女は店へと急いだ。
閉店時間もあるが、まだ4歳の翔人を長い間留守番させる訳にもいかなかった。
「いらっしゃい…あぁっ!こんばんは。こんな時間に珍しいですね」
午後7時50分…かなりギリギリだがお店にたどり着くことができた。
ここの店員さんとは仲が良かったため嫌な顔をされずに済んだ。
まりあは事情を説明し水筒を出してもらう事に…
「男の子が喜びそうなのはこんな感じのやつなんですけど…翔人君好きそうですか?」
見せてもらったのは可愛い恐竜や魚のイラストが描かれている水筒や、アニメのキャラクターの水筒…その中で1つまりあの目を引く物が…
「これめちゃくちゃ可愛いですよねっ!うちでもよく売れるんですよ」
まりあが指さしたのは翔人が今大好きなSTARWARSの水筒。
可愛いタッチで登場人物が描かれているので、男の子だけではなく女の子も使えそうなデザインだ。
まりあは迷わずこの水筒を購入した。
『すいません、こんな遅い時間に』
「いえいえ、こちらこそありがとうございました。また翔人君と遊びに来てくださいね」
午後8時10分過ぎ、店員に笑顔で見送られまりあは店を出た。
水筒を買って一安心という訳にもいかず、家では翔人がお腹を空かせて待っているため足取りを速めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます