第23話

実はまりあが使っている携帯に興味があったのだ。

友達は皆携帯やタブレットでYouTubeなどの動画を見たりアプリで遊んだりしているようなのだが、翔人は中々携帯を使わせてもらえない。

まりあが触らせないようにしているのもあるが、翔人も翔人で友達と同じ事がしたかった。

まりあが戻って来ないのを確認しそっと携帯に手を伸ばした…画面を見るとLINEのトーク画面のままなのだが、翔人には何が何だかさっぱりわからなかった。

とりあえずテキトーに画面を触ると、文字からキャラクターに表示が切り替わった…いわゆるスタンプだ。

興味津々の翔人はそれらをタップ。

そうすると送信されてしまうのだが、そんな事を知らない翔人は気に入ったスタンプを押し続けた。

押すと大きく表示されるのが楽しいのだろう。

するとすぐに既読の文字が……もちろんそれにも翔人は気付かないし、気付いたとしても漢字が読めないため気にする事はまずない。




「わっ!?」




突然携帯の画面が切り替わり音が鳴り始めた。

まりあに気付かれたら怒られるため、携帯を服に隠しながら隣のおもちゃの部屋へ移動。

音の正体は聖也からの着信だ。

以前まりあが見ていたドラマで、携帯に電話がかかってきたら緑の方を押して電話に出るシーンが流れていたのを覚えていたため、翔人は迷わず電話に出た…




「…もしもし?」


「もしもしじゃないだろ?何してる?」


「…あの時のおじさん?」


「あぁそうだ」


「やっぱりおじさんだっ!今度3人でお出かけするんでしょっ?僕水族館行きたい!!」


「水族館か…良い子にしてたら連れて行ってやる」


「…毎日ママのお手伝いしてるから良い子だよ?」


「ママの携帯を勝手に使うのもか?」


「……ごめんなさい」


「それは俺じゃない、ママに言うんだ。わかったな?」


「はーい……でも友達は皆んな使ってるよ?なんで僕はダメなの?」


「それはなぁ、ママは翔人が元気に遊んでる姿を見るのが好きだからだ。それにこれは子供が使う物じゃない…どうしても困った時だけ俺に連絡しろ、いいな?」


「おじさんに?」


「あぁ。だからもうそれはまりあに返すんだ」


「わかった……水族館、絶対だよ?」


「約束する」


「ありがとうおじさんっ!あっ、ママが戻って来たからもう切るね?バイバイ、おじさんっ」


「またな」




その後何食わぬ顔で携帯を元の位置に戻す翔人なのだが、先程までの履歴が完璧に残っているため、結局まりあに怒られるはめになった。

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