マリアと恋

第21話

翌日の午後、今日も公園には2人で仲良くランチをするまりあと聖也の姿が…昨夜のLINEでのやり取りの事もありお互い少し照れくささもあったが、2人の笑顔はいつもより穏やかだった。




「元気だよなぁ、子供って」




聖也の言葉に後ろを振り返ると、子供達が滑り台やブランコに乗って楽しそうに遊んでいる。

いつもこの時間は静かなのだが、今日は天気がいいためなのかとても賑やかだった。




「翔人もあんなふうに?」


『保育園では遊び足りないみたいです』


「男の子だもんなぁ。仕事もして翔人の面倒も見て…まりあも大変だろ?」


『迎えが遅くなる事がたまにあるので寂しい思いをさせてしまう事もあるんですけど…もっとしっかりしないとダメですね』


「あまり無理するな。困った事があったら何でも言ってくれ」




自分に対する彼からの親切心に、まりあはいつもドキドキしていた。

一回り年上で大人の余裕もある聖也の存在が少しずつ気になりはじめているのだ。




『ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです』


「……なぁ、まりあ」




聖也には前から思っている事があった。

そうそれは…もっとまりあに会う時間が欲しい。

いや、厳密に言えばもっと…ずっとまりあの側にいたい。

その思いは昨日のLINEで更に強くなった。




「今度一緒に出かけないか?もちろん翔人も一緒に」




突然の言葉にまりあは思わず箸を止めた。

思いもよらぬ彼の提案に相当驚いているのだろう…また目を見開き長いまつ毛をパチパチさせている。

しかし彼女に断る理由なんかなかった…




「ダメか?」


『そんな事ないです』


「じゃあ決まりだ」




だが彼女には1つ疑問が…どうしてこの人は自分に優しくしてくれるのだろう、と。

大して可愛くもない自分を…子供もいてしかも声の出ない自分をどうして…どうしてこんなに優しく接してくれるのだろう、と。




「まりあ?」




彼の言葉にハッとし、どうかしたのかという問いかけに首を横に振った。

すごく気になるが、こんな事は聞くべきではないと言葉をつぐんだ。




「翔人にどこか行きたい場所があるか聞いといてくれ」




都合はこちらに合わせてくれるようで、再び彼は箸を動かしはじめた。

今日も美味しいと言ってお弁当を食べてくれるし、子供の話をしても嫌な顔ひとつせずに聞いてくれる…翔人の事も良く思ってくれているような気がしてまりあは嬉しかった。

それに、聖也のそのような一面も彼女が惹かれる要因だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る