第18話

わずか1時間という限られた時間は一瞬で過ぎ去り、お別れという時間はあっという間にやって来る。

お互いの胸は切なさでいっぱいだった。




『今日も楽しかったです。ありがとうございました』


「俺も楽しかった。弁当もありがとう、ご馳走様」


『明日も美味しいお弁当作って来ますね』




それじゃあとお辞儀をし、公園を去ろうとする彼女の腕を聖也はとっさに掴んだ。

まりあは思わず足を止め、目を見開き長いまつ毛をパチパチさせて彼の顔を見つめる…何だろうと不思議に思い首を少しだけ傾けた。




「肝心な事を忘れる所だった。これをまりあに…」




手渡されたのはオーガンジーのラッピング袋で包まれた小さなプレゼント。

これだけでも十分お洒落で可愛いため、まりあは思わず頬が緩んだ。




『いいんですか?』


「もちろん」


『ありがとうございます』




彼女の嬉しそうな様子にどうやら聖也も安心したようだ。

欲しいと言われれば買ってやる事はしばしばあるが、自分からプレゼントする事は滅多になかった。

大事そうにプレゼントを手にし、ニコニコしながら戻って行くまりあをしっかり見送り、彼も公園を去った。

今日もまた一歩彼女に近付けたような気がして、聖也は嬉しい気持ちでいっぱいだった。

連絡先も手に入れたため、これでいつでもまりあとやり取り出来る。

そう思うと彼は更に上機嫌に…自分からLINEをしようか、それとも彼女から送られてくるのを待つか…そんな事を考えながら軽い足取りでマンションへ戻った。

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