第17話

『何かあるとあそこの母親は若いから…なんてよく言われるんです。一生懸命頑張ってるつもりなんですけどね』




彼女は笑顔を向けてくれるも、その表情はどこか悲しそうにも見えた。




「そんなのはただの偏見だ。だったら逆に高齢出産の人はどうなる?まりあは気にしなくてもいい」




思わず口にしてしまった本音…こんなまりあの姿を見ていられなかったのだろう。

それともただ好きな人を傷付けられる事が許せなかっただけなのか……しかしそんな聖也の言葉に彼女が驚いたのも事実。




『そんなふうに言われた事なかったからすごく嬉しいです』




悲しそうな表情は段々薄れ、いつもの明るいまりあに…どうやら彼の言葉に相当助けられた様子。

そんな彼女を見て聖也は少しホッとした。

そして彼の口は自然と開き…




「困った事があったらいつでもいい、連絡してくれ」




彼女の携帯を手に取り自身の連絡先を登録した…LINEはもちろん携帯番号も。

本当は自分から連絡先を聞くつもりだったが、彼女の力になりたいという思いが聖也に行動を起こさせた。




「これで安心だろ?俺はまりあの味方だ」




彼の言動に驚きつつも、自分の事を少しでも理解してもらえたような気がしてまりあは嬉しかった。




『ありがとうございます。でも、迷惑じゃないですか?』


「いいや」


『最初見た時は怖い人なのかな?って思ったんですけど、優しいんですね?聖也さんって』


「まりあにはな」




お弁当を食べながらサラッと答える聖也だったが、その言葉にまりあはドキドキした。




「やっぱり美味いなぁ、これ」


『ありがとうございます』


「明日も食べたいなんて言うのはダメか?」


『そんな事ないですよ?褒めてもらえて嬉しいです。好きな食べ物とかありますか?』


「まりあの作った料理」




思わぬ返事に動揺し、顔を赤くして目を泳がせるまりあの姿はやはり可愛らしい。

実は聖也にはこれといって食にこだわりがあるという訳ではない。

好き嫌いも特になく割と何でも食べる方だ。

女性によって食の好みがバラバラになるのも、気分の他にこれも原因の1つだったのかもしれない。

彼は自分が食べられる物なら何でもよかったのだ。

だがそんな聖也にも、まりあの手料理という好物が出来た。




『具体的には……?』


「そうだなぁ…玉子焼きは入れてくれ。後はまりあに任せる」


『上手く焼けるように頑張ります』




彼女はまだあまり実感がなかったが、少しずつ聖也に好意を抱いていた。

まりあから感じる甘い香りと、聖也から感じるシャボン玉のようなスッキリとした爽やかな香り…香りはお互いの相性を教えてくれるものだと言うが、実はこの2人の相性はすごく良いのかもしれない。

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