第16話

弁当箱の蓋を開けると、昨日と同様に色とりどりの様々な食材が綺麗に並べられており、聖也が絶賛した玉子焼きもしっかり入れられている。

そしてもう1つ彼の目を引く物が…




「もしかして唐揚げも手作り?」


『そうですよ。昨日の夜の残りなんですけど、子供が大好物なのでよく作ります』


「何でも作れるんだなぁ。子供って…あの男の子?」




そうだと頷く彼女は携帯の画面を変え、子供の写真を見せてくれた。

楽しそうに遊んでいる姿やぐっすり眠っている写真、そしてある1つの動画にはこんな姿も…それを見た聖也の顔は自然と笑顔に。




「男の子は皆んなやるよなぁ、これ」




動画には、男の子が自身のブランケットをマントのように羽織り、楽しそうに部屋をグルグル走り回る姿が撮影されていた。

実は昨日、はしゃぐ息子の様子をまりあはこっそり動画で撮っていたのだ。




『このブランケットすっかり気に入ってしまったみたいで…いつもわんぱくで困っちゃいます』


「この前も走り回ってたもんな。この子名前は?」


翔人はやとと言います。今年で5才になるんです』




まりあの話に彼の頭に1つ疑問が…彼女自身まだかなり若いのに子供が5才…まさかと思い聖也は尋ねた。




「まりあは?今いくつになる?」




彼の言いたい事を察したのだろう…まりあの顔から笑顔はなくなり暗い表情に…




「言いたくないなら言わなくていい、忘れてくれ」




彼女の表情を見て聖也はやはりそうなのかと察した。

すごく苦労したのかもしれない。

周囲の目や反応も冷たいものばかりだったかもしれない。

それでもまりあに対する想いは変わらなかった…むしろ守ってあげたい、彼はそう思った。




『22才です』




今にも泣きそうな表情で…そして小さく震える手で携帯を差し出すまりあ。

彼女の年齢は何となく予想していたものの、実際に言われるとやはり衝撃だった。

そして彼女はこう続ける…




『あの子は私が17才の時に生まれた子です。父親はいません』


「ずっと2人で?」


『そうです』




指輪をしていないのはやはり父親がいなかったから…何があったのか知りたい所だが、ここは聞かない方がいいと思い言葉を飲み込んだ。

17才というと高校2年生……だからなんだ?声が出ないという病気を抱えながらも彼女は立派に子育てを行っている。何も悪い事なんてしていない…聖也はまりあを偏見の目で見る事はなかった。

シングルマザーでしかも病気持ち…むしろ自分の方がやめておけと言われるかもしれない。

それでも聖也はまりあが好きだった…

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