第15話

時刻は丁度お昼時…遊んでいた子供達も母親と共に公園を後にし、聖也は1人取り残された。

彼は長い時間のように感じているが、実際にはほんの数10分程度しか時間は経っていない。

しばらく出入り口を眺めていると…




「まりあっ!」




チュール素材がドッキングされたラベンダーカラーのロングコートを羽織った髪の長い女性が…聖也にはそれがすぐにまりあだとわかりとっさに声をかけた。

それに気付いた彼女は、どこか恥ずかしながらも笑顔でこちらに駆け寄って来た。




「そのコートすごく似合ってる」


『ありがとうございます、お気に入りなんです』




頬を赤く染め、自身に向けられる上目遣いでのこの表情…なんてこの娘は可愛いんだろう…聖也はたまらなかった。

彼女を見る度に自分だけのものにしたいという思いは強まっていく。




『昨日はブランケットありがとうございました。すごく温かかったです』




差し出されたそれは丁寧に畳まれ、ほんのわずかだが彼女の甘い香りも…




「それはまりあにやるから返さなくていい」




でも…と戸惑った表情を見せる彼女に、聖也は更に続けた。




「家では使わないんだ。それにまりあなら大事に使ってくれるだろ?だから持ってればいい」


『本当にいいんですか?』


「あぁ」




嬉しそうにブランケットを抱き締める彼女の姿にまた愛おしさを覚え、聖也の頬も自然と緩む。

いつもはクールで冷たい表情をしているが、まりあといる時だけは自然と優しい穏やかな表情になれた。

もちろん、彼はこれに気付いていない。




「…これは?」




次にまりあは、アイボリーの小さな布の素材のバッグを彼に差し出した。

そして再び頬を赤らめ…




『ブランケットのお礼にと思ってお弁当作って来ました。私だけ食べてるのも申し訳ない気がして…お口に合うかわかりませんがよかったら食べてください』


「わざわざ…俺のために…?」




コクンと小さく頷く彼女。

これもまた予想外だったが、まりあが自分のためにお弁当を作って来てくれたという事実がとても嬉しくて迷わずランチバッグを受け取った。




『好みとかわからなかったのでお口に合うかわかりませんけど…』


「まりあが作った物ならなんでもいい、ありがとう」




聖也の笑みにつられて彼女もまた笑顔になった。

バッグの中はお弁当だけではなくスープジャーも入っており、中身はどうやらお味噌汁のようだ。

楽しそうに食事の準備をする聖也にまりあもまた嬉しくなり、彼の分も用意して良かったと心からそう感じるのだった。

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