第13話

「ねぇ〜、ほんとにもうバイバイするわけ?」




名残惜しそうに聖也に抱き着く女…食事を済ませた2人は今聖也の住むマンションの下にいた。

彼は店を出てすぐ女と別れるつもりだったが、色々と理由を付けて結局ここまで着いて来てしまったのだ。




「飯だけだって言ったろ?」


「…続きは?」


「ダメだ」


「…ねぇ聖也〜」


「ダメなものはダメだ。今日はもう諦めて帰れ」




渋々帰っていく女の姿を見送る事なく、聖也はさっさとエレベーターに乗り込み部屋へ戻った。

脱ぎ捨てたブルゾンからは微かに彼女の甘ったるい香水の香りが…Instagramで流行ってるモテ香水だから買ってみたとか言っていたが、聖也自身その香りはべつに好きでも何でもない。

ただこのブルゾンのように服に香りが残ってしまう事が多く、まりあと会う時は最新の注意を払っていた。

ここでふと、あのコンパクトミラーの存在が頭をよぎる。

流石にあの場では買うチャンスはなかったが、聖也はかなり悩んでいた……。

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