第12話
「見てー!うさぎさんっ!!」
画用紙いっぱいに描かれた白いうさぎと白と黒のまだら模様のうさぎ。
横には人参とキャベツもしっかり描かれていた。
『じょうずにかけたね』
「ママのうさぎさんも上手!」
まりあは絵に自信があった。
というのも昔から絵が好きで描いていたのもあるが、声が出ないため文字の他に絵で表現しないといけない事もたまにあるため自然と上達した。
「見てっ、ママの絵も描いたよ」
『うれしい、ありがとう』
「他にもいっぱい描けるようになったよ?先生も上手に描けたねって褒めてくれた」
『そうなの?よかったね』
食べ物や車、そしてまりあと自分が一緒に遊んでいる所など…その後も何枚もの画用紙に描き続けた。
買ったばかりのクレヨン、特にピンクはもうなくなりかけている。
「ピンクちっちゃくなった」
『どうしてピンクばかりつかうの?』
「ママの好きな色だから!ママいっつもピンクの服着てるでしょ?ピンクは女の子が好きな色だって先生が言ってた」
確かにまりあの私服は淡いピンクやピンクベージュといった色の服が多い。
バッグや靴もそれに合う優しい色合いの物ばかりだ。
息子の描く絵も、確かにいつも自分にはピンクの服が着せられていた。
『ほかのいろもつかっていいよ?』
「うーん…ママ何色が好き?」
『みずいろときいろもかわいいからすき』
「じゃあ……水色にする!」
今度は自分と同じ色の服を着せるんだと、再びクレヨンを手にし画用紙と向き合った。
ただその絵にはやはり父親の存在がないため、複雑な気持ちが全くないという訳でもない。
いつか2人ではなく3人の絵を描かせてやりたいが、まりあにはそれを叶えてやる自信がなかった。
子供がいる事に加え自分は声が出ない…こんな状況で好きだと言ってくれる人はいるはずがない。
まりあはそう思っていた……。
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