マリアと花

第10話

「聖也〜っ!!」




夕方7時過ぎ…重い足取りで約束した場所へ向かうと、女は既に待っていた。




「無理言ってゴメンね〜?急に会いたくなったの」




もたれ掛かり上目遣いでお決まりの台詞…女は皆こうすれば可愛く見えると思ってるのだろうか?呆れながらも軽く頭を撫でてやった。

そうすると女は更に上機嫌になり、寒いから早くお店に入ろうと腕に絡んできた。

彼女からは甘い香りはせず、するのはただの香水の香り…




「ここのお店ねっ、友達がめちゃくちゃ良かったって言っててさぁ、ずっと私も気になってたわけ。だから折角だし?聖也と来たいな〜って」




店内は全て白とライトグレーで統一されており、壁や天井にはドライフラワーが飾られていた。

こんな内装のためやはり女性客やカップルが多い。

それにいつものような身なりではなく、テキトーなパーカーにテキトーに黒いブルゾンを合わせた格好で来て正解だった。




「ねぇ、あのドライフラワー買えるんだってさ」




女が指差す方を見ると、こじんまりしたスペースではあるがそこにはアンティーク調の白いテーブルがあり、ドライフラワーが並んでいるのがチラッと見えた。




「好きなのか?花」


「好きって言うか……可愛い?みたいな。そもそも私にあーいうのは合わないって」


「…だな」


「でしょっ?!けど気になるからちょっと見に行こうよ」




席からはわからなかったがテーブルには数々のドライフラワーがあり、他にも携帯ケースやアクセサリーなどの雑貨も販売されていた。




「へぇ〜このピアス可愛いじゃん…どうっ?似合う?」


「いいや」


「だよね〜。こういうの似合うのってまさに女子〜って感じの子だよね?」




女がアクセサリーに気を取られている隣で、聖也はある物が目に付いた。

それはコンパクトミラーだ。

白いミラーをベースに、その上に店内に飾られているドライフラワーやパールを並べレジンでコーティングした物。

一つ一つデザインが異なり、ミラーの形も丸だけでなくハート型の物もあった。

まりあにプレゼントしたら喜ぶのではないか…真っ先にそんな考えが浮かんだ。




「さっきから何見てるの?」


「…べつに。お前に花は程遠いなぁって思ってただけだ」


「失礼ねっ。聖也って意外とこういう女子が好きなの?だったら私イメチェンしよっかな〜」


「やめとけ。お前がイメチェンしてもどうせ……」


「…どうせ?」


「いや…逆に花に失礼だ」


「何よそれ〜っ」




どうせまりあのようにはなれない……その言葉をぐっと抑え胸にしまった。

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