第9話
家へ戻るなり彼はソファーにダイブ…聖也は今すごく機嫌がいい。
明日も会ってくれるのはもちろん、何よりやはりお弁当をわけてくれた事が嬉しかった。
ただの玉子焼きだが、彼にとっては特別でそして忘れられない味になった。
好きな人が作ったからというのもあるかもしれないが、本当に美味しかった…聖也はふとキッチンに目をやった。
まりあが毎日あそこに立って料理を振舞ってくれたら…それはまだまだ先の事かと思いつつ、やはりそうなればいいのにと強く願った。
明日は何を話そうかと考えいると彼の携帯に着信が入る…
「あっ、聖也〜?」
携帯には番号しか表示されていなかったが、声の主はこの前隣を歩いていたあの派手な女だ。
教えろと言われれば連絡先は教えるものの、聖也は一々登録などしなかった。
どの女もすぐに切れる関係だからだ……
「なんだ?」
少し不機嫌そうな聖也…それもそのはず、まりあに惚れたあの日から彼女以外の女の事を考えるのが嫌になったのだ。
今の彼はまりあ一筋…それぐらい真剣だった。
「デートしたいな〜なんて思ってからさっ。明日空いてる?」
「いいや」
明日も特に予定などはない。
まりあと会った後に他の女と出かける気になれないだけだ。
それだとまりあにも申し訳ないうな気がした。
「え〜〜〜っ、いつなら会えるのっ?」
「さぁな」
「何よそれぇ……じゃあ今夜は?ご飯だけでもいいから行こうよ〜」
「…お前はするのか?料理」
「何よ急に…なんの話っ?」
「いや、忘れてくれ」
その後も彼女は会おうとしつこいため、聖也は渋々承諾した。
しかもご飯だけだという条件付きで。
いつもならお互いの家にそのまま泊まったりもするのだが、今の彼の頭の中にはまりあがいるため、やはり夜もその気にはなれない。
「なら7時ぐらいに店の前で待ち合わせねっ?じゃあまた後で〜」
「あぁ」
女はわがままな方が可愛いだなんて言うが、あれは嘘だ…彼はそういう女にうんざりしていた。
自分に寄って来るのはいつもそんな女で、はっきり言って鬱陶しい。
面倒だと思えば彼は自分から連絡を絶つようにしていた。
まりあにも連絡先を聞いたらどんな反応をするのだろう……ふとそんな考えが頭をよぎる。
特に彼女の場合は声が出ない。
いかに傷付けずに言えるかがとても重要だ。
「……聞いてみるか」
考えても何も始まらない…とりあえず行動あるのみだと聖也は思った。
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