第8話

すごく不思議な人と知り合ってしまった…会社へ戻る途中のまりあはずっと聖也の事を考えていた。

彼の身なりから恐らくそういう人なのだろうと思っていた彼女。

なので息子が思い切りぶつかってしまったあの日、正直すごく怖かったし怒鳴られたりしたらどうしようと思っていた。

けれど転んだ息子を起こして手まで振ってくれたりしたため、もしかしたら怖い人ではないのかもしれない…それに昨日の事もあるためまりあは余計そう思った。

ただ、どうして聖也が自分に優しく接してくれるのかはわからないが、彼女は彼女で嫌な気はしていなかった。

それどころかかなりドキドキしていた。

随分恋愛というものから離れていたため、こうして男の人と2人でいるのは久しぶりの事であり学生の頃を思い出す。

あの頃は全てが輝いていたため、思い出すのは楽しい思い出ばかり。

だがそれは赤ちゃんができたとわかるまでのほんの短い時間の話……忘れよう。

彼女は両手で大事そうにブランケットを抱え、再び聖也の事を考えることにした。

ブランケットからもほのかに彼の香りが…まりあはこの香りが好きだった。

具体的にどんな香りがするのかと聞かれれば説明は難しい…だがとても心地よい…つまりまりあにとってはいい香りであるという事だ。

明日は何かお礼をしよう、そう思いながら彼女は再び職場に戻るのだった。

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