第6話

そして翌日の午後、彼は家にあったブランケットを片手にまたあの公園に向かった。

ベンチに目をやるとそこにはもう既に彼女の姿が…こうしてまた会えるとなると聖也は喜びを隠しきれなかった。




「こんにちは」




彼女の前に立つと、またしても驚いた表情でこちらを見つめていた。

その反応一つ一つがやはり可愛らしい。




「隣いいか?」




戸惑いつつもゆっくりと頷き隣のスペースを開けてくれた。

どうやらこれからお弁当を食べる所だったようだ。




「これ使えよ?寒いだろ?」




持って来たブランケットを差し出すも、彼女は遠慮がちに首を横に振った。

昨日もそうだったのだが、会社の制服に上着を羽織っているもののどこか足元が寒そうだった…そのため聖也はわざわざ家からこれを持って来たのだ。




「いいって、風邪を引いたら大変だ」




遠慮する彼女の足元にそっとブランケットをかけてやると、やはり少し寒かったのだろう…彼女は無意識に手を伸ばしブランケットの感触を楽しんだ。




「温かいだろ?」




恥ずかしそうな顔をしながらもうんと頷き、今度はバッグから携帯を取り出した。




『ありがとうございます』




こうして携帯を見せてくれたり、頷いてくれるのは彼女にもコミュニケーションをとろうという意思が少しはあるという事。

やはり会話はできる…聖也はそう確信した。




『お昼まだなのでお弁当食べてもいいですか?』




何を打ち込んでいるのかと思えば、どうやら自分に気を使っているようだ。

いいよと言えば申し訳なさそうな表情を浮かべ、軽く頭を下げる。

今日は髪を結んでいないようで、頭を下げた時に垂れてきた髪を耳にかける仕草もまた色っぽい。

しばらくお弁当を食べている様子を眺めていると彼女と目が合った。

優しく微笑んでやると顔を赤らめとっさに目を逸らし、再び携帯を手にした。




『そんなに見ないでください』


「なんで?」


『恥ずかしいです』


「美味しそうだなぁって思っただけだ。あと、可愛いなぁって」




驚いた様に目を見開き、彼女は更に顔を真っ赤にした。

なんて素直でわかりやすい娘なのだろう…彼はますます彼女の虜になった。




『よかったら少し食べますか?』




流石にこれは聖也も予想していなかった。

頬を赤く染め、伏し目がちながらも携帯の画面を見せてくる彼女…ここで断れば自分は馬鹿だ。

それに一生後悔すると思った。




「いいのか?」




差し出されたお弁当は色とりどりの食材が入っており、まさに女の子という感じのお弁当だった。




「オススメは?」


『今日は玉子焼きが上手く焼けました』


「じゃあそれにしよう」




携帯を置いてフォークで玉子焼きを取り、それを渡してくれようとした彼女の手を掴むと、彼はそのまま自らの口へ運んだ。

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