第4話

翌日、聖也は再び例の通りに来ていた。

少し肌寒い気もするが、テラス席のあるカフェを選びそこでコーヒーを飲んで時間を潰す…この場所だと自然と通り全体が見渡せる為怪しまれる事はまずない。

携帯を触るフリをして、待ち行く人々を彼はじっくり観察した。

根拠はないが今日も必ず会える。

そんな気持ちを胸に聖也は通りを見渡し続けた……が、彼女は一向に現れない。

歩いているのはお昼休憩のサラリーマンやOLがほとんど。

昨日と同じ時間帯を狙って来たつもりだったが、それが間違いだったのだろうかと少し不安に思った。




「あのお客様、こちら相席でもよろしいですか?」




店内も混んできたようで、ここで昼食を済ませるつもりはないため聖也は店を出る事に…そしてあてもなく通りを歩いた。

途中、大きなショッピングセンターや百貨店に入ったりしたもののやはり彼女はいなかった。

もちろん、子供連れの母親が立ち寄りそうなところも目を通したが、結果はやはり同じ。

彼は仕方なく元きた道を歩いた…あの大通りとは一変、辺りは段々静かな住宅街へと姿を変えた。

休日は子供達がよく騒いでいるのだが、平日だとやはり静かで、そして穏やかな時間だ。

明日こそ会えるだろうか?そんな期待と心配を胸に足を進めていると…




「……見つけた」




1人公園のベンチに座りお弁当を食べている彼女の姿が……髪は結ばれていてOLの格好をしているが、間違いなくそれは聖也が探していた女性だ。

真っ先に彼は公園に向かい、そして彼女が座っているベンチの隣に腰かけた。

彼女は一瞬驚いた様子を見せたが、聖也の身なりを見て怖い人だと思ったのだろう…気にしていないような素振りを見せ、再びお弁当に手をつけた。

そんな彼女の横顔を聖也はじっと見つめた…やはり近くで見るとすごく綺麗な人だ。

それとどうやら、彼女は自分が誰かまだ気付いていないらしい。

意を決して聖也は声をかけた…




「それ手作り?」




驚いた表情でこちらを向く彼女だったが、何よりも自分に反応してくれた事がすごく嬉しかった。




「いつも自分で?」




戸惑った様子を見せながらも彼女は小さく頷いてみせた。

伏し目がちながらも、そこからのぞく長いまつ毛もまた魅力的だ。




「覚えてるか?俺の事」




そう問いかけると彼女は聖也の顔をじっと見つめ、そしてすぐに、あっ!というような表情を浮かべた。

一瞬の出来事だったため、覚えていないんじゃないかと不安になっていたが、彼女の表情を見て彼はホッとした。

だがしかし彼女は一向に口を利いてくれない…自分が怖いのか?それとも人見知りなのか?そんな疑問を抱きながらも、彼は一番聞きたかった事を彼女に尋ねた。

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