第3話
食事を済ませ、欲しいと言われた時計を買ってやり聖也はさっさとマンションへ戻った。
戻るなりその場にコートを脱ぎ捨て、赤い大きなソファーに倒れ込んだ。
黒で統一された部屋にあるこの真っ赤なソファーの存在はとても大きく、それなりにインパクトもある。
女に今晩家に行きたいと言われたが、この後予定があるからと軽く受け流した。
特に予定がある訳ではないのだが、今夜は1人になりたい気分だった…それもそのはず、やはり彼の頭の中はあの女性の事でいっぱいだった。
昼間の出来事を思い出しては1人余韻に浸っている。
あの清楚で上品な感じが聖也にはたまらなかった。
これまでは自然と派手な女が寄り付き、それに比べれは地味で普通の女なのかもしれない…けれど聖也には彼女がとても魅力的に見えた。
だが1つ大きな問題があった。
子供も連れていたという事は既に結婚しているという事であり、旦那の存在があるという事…彼にとってこれは大きな障害だ。
相手が彼氏ならまだしも旦那となると話は違ってくる。
そう簡単に奪っていいものではなくなってしまうからだ。
それともう1つ気になる事が…初めて見た時から気にはなっていたが、彼女…ものすごく若い気がする。
子供を連れていなければ、その辺にいる学生となんら変わらないのでは?と、そんな印象もあった。
現に今日連れて歩いていた女ともさほど変わらない印象だ……考え出したらキリがない。
どこに住んでいるのか?今いくつなのか?相手はどんな男なのか?そして名前は…
「名前…か……」
もし次会って話せるチャンスがあれば名前を聞こう。
そうでないと何も始まらない、彼はそう思った。
黒髪のロングヘアに胸元にフリルの付いたピンクベージュのロングワンピに、白いショートダウン…今日の彼女の容姿から一体どんな名前なのだろうと想像した。
容姿もそうだが、きっと可愛らしい名前に違いないだろうと聖也は想像を膨らませた。
子供も含め、3人でお茶をするぐらいの…最悪友人でもい。
せめてそれぐらいの関係にはなりたかった。
子供がいる女性は、少し面倒だと思われて敬遠されがちだが、彼にはそんな感情は全くなかった。
好きな人が大切にしているモノは、それも含めて自分も大切にする…それが聖也の恋愛であり、彼なりの愛情表現にも繋がるのかもしれない。
見かけによらず、彼は心が広く優しい人間なのだ。
「…チャンスはまだある」
そう自分に言い聞かせソファーから体を起こし、彼はバスルームへと消えていった。
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