第42話

しばらく尾行を続けているが…何なんだこの違和感?こんなにも気付かれないものなのか?あの男なら既に気付いていてもおかしくない。

それなのになぜ?まさか本当に気付いてないとでもいうのか?あれほどの男が?……やっぱり何か変だ。

このまま行くと潜伏先だぞ!?なぜ俺にそこまでバラす必要がある?俺を試しているのか?



「やっと着いた、私もう動きたくないんだけど」


「おいおい…これから楽しもうってのにそれは困る」


「ちょっ、やめてよこんな所で」


「どうせ俺達しかいないんだ」


「かもしれないけどっ…ふふっ、ねぇちょっと…待っててばぁ」



そうか…このためだけにわざわざリスクをおかして俺を潜伏先まで…



「ふざけんなっ!!」



どうだ?恋人が目の前で違う男に染まっていくのを見るのは…これでお前はいつでもシャロンを奪いに来ることができる。

まぁ、シャロンがお前に着いて行くとは思えないけどなぁ。



「なぁhoney」


「…なによ?」


「俺が好きか?」


「それ言わないとダメ?」


「今聞きたい。ほら、どうなんだ?」


「やっ、ちょっとっ…くすぐったいってばぁ…わかったわよもう…大好き。これで満足した?」



…シャロン?何言ってんだよ?大好きって…本当なのか?心の底から想ってるのか?俺がお前をどんなに想っていたか…!

その瞬間俺の中でなにかがバラバラに崩れた……それはきっと彼女との数々の想い出達。

憎い…全てが憎いっ!!あの男もそうだっ!!そしてシャロンもっ!!!!

……もう彼女は必要ない。



憎悪に満ちた彼が立ち去るのを男は見逃さなかった。

こうなることは計算済み…そんな余裕な表情を浮かべていた。

全て思い通りに動かし、いらなくなったら切り捨てる…それがこの男のやり方。

何が嘘で何が本当なのか…もしかすると彼女に対する愛情も全て…全て嘘なのかもしれない。



「そんなに好きなら仕方ない…よし、中で続きだ」


「えっ!?なんでそうなるのよっ!!」



彼女は彼女で、何も知らずに愛されているほうが幸せに違いない。

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