第41話

幸せな者がいれば、一方でそうでない者もいる。

まさにそれは彼のことだ。



「…クソッ!!」



目の前にいる殺人鬼を捕まえられない悔しさ、そして…愛する人を奪われた怒りでいっぱいだった。

1週間ほど前、例の取り引き相手のヤクザから連絡をもらった時は驚いた。

シャロンが生きていたという事実だけでもそうだが、まさか殺人鬼と一緒にいるなんて…到底信じられるものではなかった。

脅されて仕方なく行動を共にしているだけだと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。

ただで帰る訳にもいかず、尾行して居場所を特定することにしたものの…上手くいく可能性はかなり低い。

何よりもシャロンの様子が気になって仕方なかった。

1目でいいから会いたい…そんな思いでいっぱいだった。



「シャロン…!」



念願叶いやっと会えた愛しい人…しかしそこには彼の知るシャロンはいなかった。

以前長かった髪がバッサリ切られ外見が変わったのもあるが、まるで別人のようだった。

俺の知るシャロンは伏し目がちでどこか自信がなく儚い、そんな印象だった。

けど今俺が見ている彼女は…本当にシャロンなのか?

あんな無邪気に笑ってる姿見たことない…まるで人が変わったみたいだ。



「…俺じゃダメなのか?」



何でだよシャロン。

何で俺じゃなくてあいつなんだ。

あいつは殺人鬼だ…一緒にいていいはずがない。

それなのに何で…何で笑ってるんだよ?

あんな顔俺には1度も見せてくれなかった……あいつといる時はいつもそうやって笑ってるのか?

俺の何がいけなかった?

どうして心を開いてくれない?



「戻って来てくれよ」



今すぐにでも力づくで奪いたい衝動が彼を襲う。

だが今の俺はあいつに勝てない…それどころか逮捕も出来ない。



「見つけてやるよ…お前を捕まえるための証拠を」



そしてシャロンも取り戻す。

もうこれ以上お前の好きにはさせない。

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