駒
第40話
ここは昔よく訪れていた教会。
あの頃は綺麗な鐘の音がよく鳴り響いていて…すごく素敵な思い出ばかり。
お墓もだけど、すっかりボロボロになっちゃったな。
「honey」
声と同時に一瞬強い風が吹き、カラスの群れが一斉に飛び立った。
その姿は教会には相応しくない…まるで悪魔のように見えた。
けれど私の中に恐怖という感情はない。
むしろ彼は私の……knight
「やっぱり来たんだ…寂しがり屋はそっちなんじゃない?」
「おもしろいこと言うなぁ。嫌いじゃないぞ?お前のそういうとこ。ah…これかぁ、お前の両親ってのは……She is the world to me. To love someone forever…( シャロンは俺の全てだ。一生愛する… )」
「!?…どうしちゃったの?急に…ママとパパの前で恥ずかしいんだけど?」
「これが俺の気持ちだ…それに挨拶してなにが悪い?」
「ううん……かっこいいんじゃない?」
「What sorry?」
「バカッ!…もう言わないよっ!!」
「oh…それは残念だ」
「ほら早く帰ろっ?じゃないと置いてくよー?」
高めのヒールで無邪気にはしゃぐ姿は例えるなら天使…いや、違う。
今の彼女は悪魔に魅了された天使、堕天使と言ったところだろうか?
しかしなぜだろう?堕ちてしまってから輝いて見えるのは…
私達の関係は誰にも理解されないかもしれない。
ママ、パパ…ごめんね?
悪いことだっていうのはわかってる。
わかってるけど私はこの人を選んだの。
誰になんと言われても、私はこの人と一緒に生きていきたい。
「また折れるぞ?ヒール」
「平気よ」
「次は買ってやらないからな?」
「え〜っ」
「嫌なら大人しくしてるんだ」
「?……ちょっと!?」
愛する人を抱きかかえて階段を降りていく姿はまるで結婚式のワンシーンのようにも見えるが、2人は違う。
綺麗な式場でなければ、ボロボロの教会を背にくたびれた階段。
それはまるで誰にも祝福されないことを表しているかのようだ。
ただそれでも……この2人の間には幸せの時間が流れていた。
「ロマンチックだろ?」
「ロマンチックなのぉ?場所選びなさいよ」
誰にも理解されない2人の時間。
これを邪魔する者がいればきっとこの男は黙っていないだろう。
もし邪魔をすれば顔を切り刻まれて殺される。
いや、もしかしたらこれだけでは済まないかもしれない……
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