第36話
昼食なのか夕食なのかわからない食事をした彼女は、食器を片付けバスルームへ向かった。
もちろん、彼女の入浴時間が長いということは知っている。
その間彼はというと、珍しく誰かに電話をかけていた…
「楽しくやってるか?」
「楽しいも何もっ…もう生きた心地がしないっすよぉっ!」
どうやら相手は1度彼に電話をかけてきた男のようだ。
あの後彼のケータイには男からこまめにメールが届いていた。
「今生きてるだろ?こんなスリル滅多に味わえないからなぁ。それよりどうだ?動きはあったか?」
「いっ、言われたとおりにやってるけど…いいんすかっ?刑事にあんなこと教えて…これじゃあいつバレてもおかしくないっすよ!」
「そのほうが何倍もおもしろい」
「やっぱイカれてるぜあんた…そういえばあの刑事、女がどうとかって言ってたけど、何のことかわかんねぇから知らないって答えたんすけど…」
「女がいるのは確かだ。それもとびきりいい女だ…お前も知ってるだろ?」
いくつか持っている彼女の写真の中から、自身が気に入っているものを選び男に送った。
「どうだ?美人だろ?」
「こんな何枚もいらないっすよ!!まぁ確かに美人だけど、こんな女知らないっすよ?俺」
「ah…そうか、知らないか…」
「それよりっ、俺これからどうすればいいんすか!?刑事と繋がってるなんて仲間にバレたらまずいんですって!!」
「その心配はない。まぁ、お前が余計なことをせず大人しく俺の言うことを聞いていればの話だがなぁ。よしっ、次はこの女の情報を流せ」
「…そんなことしていいんすか?だってあんたの女なんじゃ……」
「黙って俺の言うことを聞け。そうだなぁ…もうすぐ墓参りにでも行くとだけ伝えろ」
「それだけ…っすか?」
「あぁ、生きてるってのと墓参りに行くってことだけ話せばいい。あとはいつも通りシラを切ればいい。まっ、本当に何も知らないからなぁお前は」
「わっ、わかりましたよ…それより、本当にバレないっすよね?俺が刑事と取り引きしてることと、組の裏切り者だってこと…」
「何度も言わせるな、お前は俺の言うとおりに動いていればいい。お前が組を抜けようとしていたこともまだ誰にもバレちゃいない。わかったらさっさと仕事しろ」
「あっ、あぁ…またメール入れる」
相手はあの〇〇組に所属している男で、あろうことか神崎 優翔と取り引きをしていた人物。
そう、この1連の流れも彼が仕組んだ罠だったのだ。
なぜそんなことをする必要があるのだろう…謎は一方に深まるばかりだ。
「なぜお前が刑事をしている?」
神崎 優翔が写った写真をしばらく眺めフォルダーから削除した。
もうお前の写真は必要ないということなのだろうか?それとももっと深い意味が…?
だがこれだけは言える。
写真を眺めていた彼の目は今まで以上に冷徹で殺気をまとっていた……
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