第33話

扉を開き店内に入ると、いかにもセレブってかんじのお客さんばかり。

そういうところだから仕方ないんだけどね。



「で?どれにするんだ?」


「決めてるわけないでしょ?そんなの」


「おいおい、冗談だろ?これじゃあまた永遠に決まらないなぁ」


「だから留守番しておけばよかったのよ」


「こんなにつまらないのか?一般人ってのは」


「私は楽しいけど?…ねぇ、これどう?」



目に付いたのはベール付きの小ぶりなハット。

実のところこれが1番欲しかった物でもある。

被ったかんじは案外悪くない。



「悪くはないが先に着る物を選べ」


「…わかったわよ。じゃあ……これとこれ試着するからちゃんと待っててよ?」


「なんなら手伝ってやろうか?」


「嫌よ、そのほうが余計に時間かかるじゃない」


「hun……」



カーテンをピシャリと閉め、さっさと着替えることにした。

これ以上長引くとまた機嫌を損ねるに違いない…もうそんな予感しかしなかった。



「ねぇ、これどう思う?」



最初に着たのはタイトめのワンピースになっていて、ノースリーブの形が絶妙に可愛い。



「お前らしくていいんじゃないか?」


「たい焼き食べながら言われてもねぇ…店の物汚さないでよ?てゆーか、普通店内で食べたりしないから」


「わかった、わかった…早く次のに着替えろ」


「はいはい」



2着目はロング丈のワンピースになってる物で、裾がアシメになっているのがお洒落で可愛いと思った。

普段こういう形のは着ないから少し違和感があるのも事実…



「ねぇ、これおかしくない?」


「珍しいなぁ、いつもは短いのしか着ないのに……妊娠でもしたか?」


「……」


「…ほんとにしたのか?」


「そんなわけないでしょ?呆れただけ。それよりどう?ちゃんと似合ってる?」


「なんだぁ、期待させるなよ。似合ってるのは似合ってる」


「…ほんとに?」


「本当だ、俺がお前に嘘なんかついたことあるか?」


「じゃあ……どっちにしようか?」


「どっちも買えばいいだろ?」


「贅沢」


「金を出すのは俺だ。だったら2つとも買っておいたほうがお前は得だ」


「Really?」


「デートで俺がお前に金を出させたことがあるか?ん?わかったらさっさと着替えてこい」


「attractive……」

( かっこいい…… )


「何だ?」


「…!?何でもないっ…着替えてくる」



たい焼きのおじさん…ほんとに見る目あるかも。

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