第32話
完全に予定が狂った!!
……流される私も私だけど。
朝は予定があったのに気がついたらもう12時前!?
案の定包帯の巻き直しもして…はぁ。
「ねぇ、私出かけるけどお昼勝手に食べてて。冷蔵庫に何かしら入ってると思うから」
「…どこに行く?」
「喪服買いに行くの。この時期ママとパパの結婚記念日だから毎年花をプレゼントしてたってわけ」
ママもパパもお祝い事はけっこう大事にするタイプの人だった。
大きくなってからも私の誕生日はちゃんとお祝いしてくれたのよね。
軽く髪をセットし、一応サングラスをかけたら準備万端。
この状況になって初めて出歩いた時はちょっと怖かったけど、堂々としてたら案外気付かれなかった。
まっ、いきなりサングラス取れなんて言う人いないしね。
「そうか。ならさっさと行くぞ」
「着いてくる気?怪我人は大人しくしてなさいよ」
「たまには一般人の生活も体験しておかないとなぁ」
「はぁ…もう好きにすれば?」
安静の意味わかってるのかしら?
こんな目にあって帰って来たのにまた出歩いて大丈夫なの?
……ほんと困った人。
誰にも見られてないからいいけど、道中もナイフカチャカチャして遊んでるし。
「一般人はそんなの持ち歩かないんだけど?」
「持った奴も紛れてることだってある」
「あっそ。いいけど街中ではちゃんと閉まってよね?」
「もちろんわかってる」
「…ちゃんとわかってる?」
「大丈夫だ、少しは信用しろ」
どうだか……そう言いながらずっと遊んでる。
そんな調子が続くも、しばらくするとお目当ての場所が近付いてきた。
ここに来てようやく彼も一般人になってくれるようだ。
「よう、お嬢ちゃん」
声のするほうを向くと、たまに買うたい焼き屋のおじさんだった。
「あれー?おじさん?珍しいね、こんな所で屋台出してるなんて」
「あの辺は最近物騒でなぁ…なんでも、やばい連中が暴れまわってるって話だ」
「へぇー、そうなんだ」
「ところで今日はいい男連れてるじゃねぇか。いいなー若いもんは…ほらこれ持って行きな、俺からの奢りだ」
そう言って手渡されたのは紙袋いっぱいに入ったたい焼きだった。
「いいのっ?」
「いつも買ってくれるお礼だ、2人で仲良く食べな。ちなみに中は全部クリームだ」
「おじさん最高、ありがとう」
「またいつでも寄ってくれ」
お昼まだだったしご飯代浮いてラッキー。
おじさんとこのたい焼きけっこう美味しいんだよねぇ。
「俺がいい男か…hun…中々見る目があるなぁ。よこせ」
「随分自信があるんだ。それより私の分もちゃんと残しといてよ?」
「あぁ」
1つ食べようと思ったが目的のショップが近付いてきたため、楽しみは後に取っておくことにした。
前から新しいのに買い替えようと思ってたし、いいのがあればいいんだけど…
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