第31話

体勢は逆転され、今度は私が彼を見上げるかたちになった。

恥ずかしさと緊張から彼を直視することが出来ない…視線を逸らすもその都度彼は私の顔を覗き込んでくる。



「照れてるのか?ん?」


「だって…」


「ほら、こっち見ろ。お前が欲しい」


「ちょっ…傷広がったらどうするのっ…?」


「また手当てすれば済む話だ。その時はしてくれるんだろ?honey」


「そんな勝手なっ…あっ、ダメ……!!」



\ ♪♪ /



「……」


「……」



\ ♪♪ /



「電話…鳴ってるよ?」


「ほっとけ」



\ ♪♪ /



「……」


「……」



\ ♪♪ /



「…あぁっ!たくっ…!!おい今いいところなんだっ!!!!後にしろっ!!!!」



何度もかかってくる電話に最高に不機嫌な彼。

その場を離れようとしたが、立ち上がった瞬間彼に腕を引かれてしまい、またソファーに逆戻りした。



「でっ?なんの用だ?……あのなぁ、そういう報告は一々電話でするなぁ。お前が電話してこなきゃ今頃俺はhoneyと楽しい時を過ごしてたんだ。いいか?用があればこっちから連絡するし、お前は二度と俺の電話を鳴らすな。わかったらささっと仕事に戻れ」



なんてめちゃくちゃな…

イライラが治まらないようで、ケータイの電源を切りそのまま投げ捨ててしまった。



「いいの?そんなことして…相手がかわいそう」


「悪いのはあいつだ」


「ふ〜ん…じゃあもし忙しい時に私が電話してきたらどうする気?鬱陶しいって切るわけ?」


「いやぁ、お前は別だ。あんなバカなんかよりよっぽど価値があるし、俺はお前専用の携帯を持ってる。シャロンは寂しがり屋だからなぁ…どんな時でもすぐ出てやるから安心しろ」



…なんかちょっとズレてるような…?それより携帯2台持ちしてたんだ。

普段触ってるのあんまり見たことないから気付かなかった。

まぁまたイライラされるのも嫌だしここは素直にありがとうが正解かな…



「そもそも俺達が電話する意味なんて全くない」


「どうして?」


「常に一緒にいるだろ?」


「あー…まぁそうかも」


「なぁ?…それより続きだ、もう邪魔は入らない」


「えっ?あっ、ちょっと…!?」



電話の相手が誰なのか気になったが、彼から降ってくるキスの嵐により考える隙も聞く隙も与えられなかった。

心地よい時間に、私は段々電話のことなどどうでもよくなっていた。

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